為末さん、スポーツ界は息苦しいですか? 「無菌型」の管理が、体罰へつながる

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

最後はやっぱり日本いいなあ

田中:アメリカから日本を見ると、本当に見え方が変わりますよね。

為末:僕、アメリカで最初にビックリしたのが、たしか渡米した初日にスーパーに行ったときなんですが、店の前でガールスカウトの格好をした小学生の女の子が手作りクッキーを売ってたんです。売上金を寄付したり、活動費にするんですね。その子のプレゼンがめちゃくちゃうまいんですよ。

僕、自分ではしゃべるのが結構、上手だと思ってるんですが、全然相手にならないぐらい。クッキーを掲げて、「あなたが買ったこのクッキーが何をもたらすかを想像しみてください!」みたいなことを言ってる(笑)。それがかなり衝撃的でした。

田中:あっちの人は小さい頃から鍛えられてますから(笑)。

為末: アメリカで生活を始めた頃は、アメリカ最高!って感じだったんですけど、3年目ぐらいから変わってきました。日本の特徴が見えてきて。

東日本大震災が起きたとき、アメリカ人は日本人にビックリしてたんですよ。リーダーがいないのに一人ひとりが瞬間的に空気を読み合って、全体が調和して動いている、暴動も起きないって、アメリカ人からしたらありえないことで、「これ、誰が指示してんの?」「どうやって成り立ってんの?」って不思議がっていました。

よく「日本はリーダーが不在」と言われますが、もしかすると「リーダーが必要とされない社会」でもあるのかなあって。リーダー不在が悪いばかりではない。危機的状況でもないのかなとか。

まあ、個人が型にはまっている、はめられているという悪い点でもありますが。原発の是非みたいな、どっちにも振りがたい問題を議論で決めなきゃいけないときには、悪い点の弊害が出てきてしまうと思うんですけど。

田中:日本の特徴が良くも悪くも見えてきますよね。

為末:どうしてもアメリカにいるときは日本が悪く見えるんですが、最後はやっぱり日本いいなあって思えてきます。

田中:それで日本に戻って来られた、と。

為末:もうひとつ理由があります。僕はスポーツ外交のようなことをやりたいと考えているんですね。たとえば、紛争している国同士でスポーツイベントをすると、体を介した経験をすることで紛争が本格化しにくい。そういうスポーツ平和学みたいなものが今、生まれているんです。

それでアメリカでIOC(国際オリンピック委員会)のパーティに初めて参加したら、全然相手にされなかったんですよ。僕と同じ銅メダル2個取ったぐらいの人なんて、めちゃくちゃいる。もう金メダル何個という世界で。僕はこの国際舞台に入っていくためのライセンスがないんだと痛感しました。

でも、そのパーティで日本のあるスポーツ用品メーカーの社長さんは十分相手にされていたので、僕も日本に戻って、何かしらの肩書を持てば国際舞台で武器になると思ったんです。やっぱり肩書がないと厳しい。もちろん、自分のプレゼン不足もあったんですけど。

田中:なるほど。

(構成:上田真緒、撮影:梅谷秀司)

※ 続きは2月26日(火)に掲載します

田中 裕輔 ロコンド代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たなかゆうすけ / Yusuke Tanaka
株式会社ロコンド 代表取締役。
1980年、大阪府生まれ。
2003年、一橋大学経済学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンに入社。
07年、26歳で同社史上最年少マネージャーに就任。
09年、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院にてMBA取得。
同年、DeNA Globalにおいてマーケテイング・製品担当上級副社長を経て、11年、株式会社ロコンドを共同創業し、現在に至る。
著書に、ベストセラー『なぜマッキンゼーの人は年棒1億円でも辞めるのか?』、『ガンガン行こうぜ!人生のイシューを解く「インパクト志向」』がある。
Twitter: @Yusuke_Tanaka
この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事