さらに、返品・返金に応じる際に、消費者から「以後SK-IIの安全性について口出しをしない」旨一筆を取ろうとしたことが火に油を注ぎ、事件発生から1週間後、P&Gは主として高級デパートやショッピングモールにある97店舗で商品を棚から降ろして販売を停止する羽目に陥りました。メディアは、P&Gの損失は1日当たり売り上げ合計約18万ドルになると書き立てました。
また、ネット上では、P&Gの中国人消費者に対する対応は傲慢だという声が大きくなりました。一連のプロセスを通して、中国消費者の論点は、「SK-IIの品質問題」から「P&Gの態度の問題」へとすり替えられていったのです。行動の根拠が理性から感情へとエスカレートしてはもう収拾がつきません。
標的はアメリカ? それとも日本?
この事件が発生したとき、China Daily紙は「アメリカの巨大消費財メーカーP&G社」を主語として報道していました。また、アメリカのメディアの論調もアメリカ企業が標的となったというものでした。
一方、日本の報道では、以下のような理由から、日本に対する、いわれなきバッシングであるとの論調が主流でした。
・SK-IIが日本で開発・製造されていること
・2006年5月に日本が残留農薬への懸念から中国農産物の輸入を規制したことに対する報復と考えられること
・中国消費者の声の中に「SK-IIよ、日本に帰れ」と主張したものがあったこと
結局、SK-IIは欧米先進国で何の問題もなく使用されているという当たり前の事実に加えて、シンガポール、台湾、香港でも安全性が確認されたことから、10月になって中国側が「普通に使用しているかぎりは安全性に問題ない」との見解を示して事態は収束に向かいました。
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