QE3はいつまで続くのか 米国で再び膨らみ始めた信用バブル(Fedウォッチャー)

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こうした動きがシステミック・リスクをもたらすかどうかは、短期金融市場とのつながりを持つかどうかに左右される。リーマン・ショックという歴史的な金融悲劇は、サブプライム住宅ローンがABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)という衣をまとい、レポや証券貸借などの短期金融市場に“安全な短期負債”のごとく蔓延し、その後“安全な短期負債”への神話が崩れたために起きた。

過熱が危惧される社債を担保としたレポの割合は現状では低く、システミック・リスクの懸念は小さいようにみえる。しかしスタイン理事は、次のバブルでは“安全な短期負債”が危機を伝達するビークルになるとは限らないという。ミューチュアルファンドやETF(上場投資信託)といった“要求払いのエクイティ”がジャンク債等を抱え込めば、先の金融悲劇と同じことが起こり得る。そして実際に、それらの残高は金融危機後、右肩上がりで増え続けている。

統計に現れているリスクテイクは氷山の一角

スタイン理事の主張で興味深いのは、「統計で確認できる動きは限られる」という現実主義だ。特定の債券市場で不穏な動きがあったとすれば、その市場を危険と見なすよりも、「氷山の一角」として監視の目を広げるべきだという。

さらにもう1つの興味深い主張がある。クレジットスプレッドに反映される「最終投資家のリスク許容度」よりも、「見かけの会計利益を嵩上げして報酬を高めよう」という金融市場参加者の行動原理が、バブル醸成に大きな役割を果たすという見方だ。債券市場でハイリスクな債券の発行が急増しているのは、そうした行動原理を反映している可能性がある。

新たな規制や監督体制を導入しても、規制アービトラージ(裁定)が繰り返されるだけで、バブルに対して十分な対応はできない。スタイン理事は、目に見えないところで広がっているバブルにも対応できるという点で、早期の金融緩和解除の必要性を感じているようだ。

企業向け信用市場における過熱が続くのか。バブルを防止するために望ましい政策対応とは何か。第1の評価軸に加え、QE3の第2の評価軸を巡る議論も活発化しそうだ。

小野 亮 みずほリサーチ&テクノロジーズ プリンシパル

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おの まこと / Makoto Ono

1990年東京大学工学部卒、富士総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社。1998年10月から2003年2月までニューヨーク事務所駐在。帰国後、経済調査部。2008年4月から市場調査部で米国経済・金融政策を担当後、欧米経済・金融総括。2021年4月より調査部プリンシパル。FRB(米国連邦準備制度理事会)ウォッチャーとして知られる。

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