QE3はいつまで続くのか 米国で再び膨らみ始めた信用バブル(Fedウォッチャー)

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QE3をいつまで続けるのか、その理由付けは各社各様とみられるが、今後「7%の失業率」が1つのメルクマールになっていくかも知れない。ブラード・セントルイス連銀総裁が2月に入り「7%の失業率」に直接言及したことがそのきっかけだ。ブラード総裁は、インタビューで「7%近傍の失業率なら、QE3を開始したときと比べて“労働市場が大幅に改善した”と考えることができるだろう」と述べた。

“労働市場の大幅な改善”は、QE3のあり方を考える上での第1の評価軸に相当する。ブラード総裁自身の見通しは楽観的で、本年末には失業率が7%近傍に達するとみている。そのことからブラード総裁は、年末にはQE3を停止できるという考え方を明らかにした。その後エバンス・シカゴ連銀総裁も、ブラード総裁の発言を受けて「失業率が7%まで低下していくようなら、QE3を停止できるかも知れない」と述べている。

ブラード総裁の発言を踏まえると、2月21日に公表される1月FOMCの議事録でも、QE3の第1の評価軸について、より具体的な判断基準が議論されたことが明らかにされる可能性がある。「7%の失業率」が、QE3の新たな定量的ガイダンスになるのかどうか、大いに注目したい。

 住宅価格の上昇に賭ける米国金融のダイナミクス

当面は米国経済に対して慎重な見方が必要と思われるが、もし住宅市場の回復が持続的なら、米国経済の先行きは明るさを増すことになる。

昨年は住宅市場の需給が改善し、住宅価格が上昇したことを受けて、9月までの間だけで140万件の住宅ローンがアンダーウォーター(住宅ローン残高が担保住宅の資産価値を上回る、含み損の状態)から脱した。アンダーウォーターでなくなれば、借り手は新たな住宅ローンへの借り換えが可能になり、歴史的な低金利の恩恵を享受できるようになる。米国経済は、バランスシート調整の重石から解放されていく転換点を迎えるだろう。

報道によれば、すでにヘッジファンドやプライベートエクイティ・ファンドの一部は、住宅市場の本格回復に向けて大きな“賭け”に出ている。未開発の土地、住宅建設業者、差し押さえ住宅、建材メーカーといった住宅業界のサプライチェーン全体に広がる買収が進んでいるというのだ。

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