ゼネコンの未来を変える「3D改革」の衝撃 鹿島、大幅増益の知られざる立役者
2013年末、三菱地所が分譲予定だった高級マンション「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」で施工ミスが発覚した。施工したのはゼネコン大手の鹿島。配管や配線を通すために構造躯体にあける孔が設計図通りでなかったのが原因で、鹿島はマンションの建て替えを余儀なくされた。
鹿島はこれを機に、ある施策を積極的に推し進めた。三次元(3D)で設計・施工シミュレーションが可能なBIM(ビム=ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入だ。そのスピードは早く、2015年度には受注高5億円以上の国内建築工事のうち8割に適用し、2016年度中に全現場への導入を計画する。全現場への導入は業界初の試みになる。
詳細なシミュレーションが可能
導入の効果はすでに出ている。同社の2015年度決算(2016年3月期)は、本業の儲けを示す営業利益が前年度に比べて約1000億円も押し上げる大幅増益となったが、「その2割はBIM導入拡大による生産効率アップによるもの」(矢島和美建築管理本部次長)という。絶大な効果を上げるBIMとは一体何だろうか。
週刊東洋経済は7月30日号で『ゼネコン バブル超え』を特集。建設業界の最前線においてBIMのような3次元設計・施行シミュレーションの果たす重要性が浮かび上がってきた。
建築では、昔ながらの平面図などの二次元図面をコンピューター化したCAD(コンピューター支援設計システム)は日本でも早くから普及した。しかし実態は、製図板がコンピューター画面に置き換わっただけ。たとえば建物に複雑に配置される配管や配線などが互いに干渉していないかどうかなどをチェックするのは難しかった。
これに対して、BIMは二次元CADを三次元化する。設計の早い段階で複雑な3Dの設計・施工シミュレーションが行えるため、事前に配管・配線などの相互干渉が自動チェックできる。冒頭のようなマンションの施工ミスを未然に防ぐことができるのだ。さらに、複雑なデザインの建物を設計しやすくなる。2012年に竣工した東京スカイツリーや、白紙撤回になった故ザハ・ハディド氏設計の新国立競技場にもBIMが使われていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら