公務員に転じるゼネコン社員の偽らざる本音 人手不足の建設業界、定着は大きな課題だ
人手不足の問題が深刻化
都心の再開発や東京五輪関連のインフラ整備など、首都圏を中心に仕事が次から次へと舞いこむ建設業界。工事が進むにつれ、職人(技能労働者)不足の問題が深刻化している。
週刊東洋経済は7月30日号で『ゼネコン バブル超え』を特集。建設業界の最前線を追う中で浮かび上がってきたのは、職人を束ねる立場にあるゼネコン(総合建設会社)ですら、自社の技術系社員の確保に頭を悩ましている現状だ。
特にこの10年近く、起きている変化がある。ゼネコンから地方公務員への転職が後を絶たないことだ。自治体は技術職員の中途採用に力を入れている。団塊世代が続々と退職する中、道路や橋梁、トンネルなどのインフラは更新時期を迎え、地震などの災害対策も待ったなし。都道府県や市町村では土木・建築部門の技術職員が不足した状態が続き、最近では東京都や横浜市など多くの自治体が50代の職務経験者にも採用の門戸を広げている。
ゼネコンからの離職は、入社数年の若手社員と30代の中堅社員に目立つ。30代半ばともなれば、複数の工事現場で経験を積み、専門資格も取得して、ようやく現場で責任ある重要業務を任せられるようになるのだが、多くのゼネコン社員が離職を決断するのも、まさにこの時期だ。「資格を取らせた途端、自治体に出て行ってしまうこともある。優秀な社員がどんどん自治体に取られていなくなる」とあるゼネコンの幹部はこぼす。
ゼネコンから公務員へ移る決め手は、転勤と勤務地の問題にある。ゼネコンの建築部門は、ビルやマンションの工事現場を中心に1~2年程度のサイクルで勤務地が変わる。一方、トンネルやダムなどの土木部門は工期が長い半面、公共交通機関すら通っていないような不便な場所がほとんど。現場を転々とする社員は、必然的に単身赴任の期間も長くなる。
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