ゼネコンの未来を変える「3D改革」の衝撃 鹿島、大幅増益の知られざる立役者
鹿島の業績が改善したのは施工ミスがなくなったというより、早期の段階で詳細な設計・施工計画が作れるようになり、それが生産性の向上につながったことが大きい。設計の段階でも3Dで具体的な施工イメージを見られるので、施主とのやりとりが活発になり、プロジェクトの”作り込み”ができるようになったという。
そしてBIMの最大の特徴は、材料や設備機器などの情報を設計図とリンクさせてデータベース化できるため、設計・施工・維持修繕まで一元的に管理できることだ。ビッグデータやAI(人工知能)に活用するための情報プラットフォームにもなりうる。そのため、海外では国家戦略としてBIM導入を進める例もある。英国や韓国では公共建築工事で、シンガポールでは2012年から民間工事でもBIMの利用が義務づけられている。
日本では2000年代後半から、日建設計など大手建築設計事務所や大手ゼネコンの設計部門からBIM導入が始まった。鹿島の取り組みもほぼ同時期からだったが、特徴的なのは設計部ではなく、施工部主導でBIMの導入を進めたことだった。2013年にはグラフィソフト(本社・ハンガリー)製のソフトやNTTコミュニケーションズのクラウドサービスを利用した施工BIMシステム「Global BIM」を構築、運用を始めた。
日本の建設業はICT化が遅れている
そもそも日本の建設業では、生産システムのICT化はなかなか進んでいない。それは建設業の生産システムが工程ごとに分業化されているためだ。設計、施工と維持修繕、さらに建築では意匠(デザイン)、構造、設備ごとに別会社が入り込む。そのため、各工程でICT化が進んでも、生産システム全体の合理化・効率化にはつながらなかった。
現在、工事現場へのBIM導入は2015年で韓国5割、欧州7割、米国8割に対し、日本は4割にとどまる(日本でのBIM普及団体「BIMライブラリーコンソーシアム」の資料)。そうした中、鹿島は日本勢では先駆けてBIMの導入を一気に進めたわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら