電子書籍取次「メディアドゥ」、急成長の秘密 「LINEマンガ」や「楽天マンガ」に独占提供
急成長の背景にあるのは、電子書籍市場の継続的な拡大だ。インプレス総合研究所の予測によると、2015年度の電子書籍市場規模は前年度比34%増の1890億円、2016年度は同24%増の2350億円。3年後の2019年度には3400億円に達する見通しだ。
一方で紙の出版市場はというと2015年は1兆5220億円へ前年比5%減(出版科学研究所調べ)。依然、規模は大きいものの、ピークだった1996年の2兆6564億円に比べ6割以下の水準まで落ち込んでおり、縮小に歯止めが掛かる気配がない。いずれ電子書籍市場に逆転されかねない趨勢だ。
また、紙の書籍では、取次業者を介さずに、出版社と書店が直取引をする動きが盛んになりつつある。ところが、電子書籍の場合、売り上げデータ集計の煩雑さなどから、そうした直取引の動きは希薄なようだ。「1冊を複数に分割して販売することもあり、集計業務が複雑なため、取次が代行する意味が大きい」(メディアドゥ幹部)。
電子書籍が利用の裾野を広げるうえで大きな役割を担ったのが、スマートフォンの普及だ。電車での移動時など「すき間時間」の消費活動の一つとして、スマホゲームなどに並び、漫画を中心とした電子書籍の閲覧が定着したからだ。
電子書籍市場全体に対し、電子書籍取次の市場規模は6割程度の1200億円程度と推測される。メディアドゥは電子書籍取次で「3強」といわれる大手3社の一角を占めており、約1割のシェアを握り、業界2位。最大手は出版デジタル機構(2016年3月期の売上高146億円、営業利益6.2億円)だが、足元の成長率はメディアドゥが上回り、トップとの差は縮まりつつある。3位にはモバイルブック・ジェーピーが続いている。
強みは技術力、国内外で特許
メディアドゥは今2017年2月期も好スタートを切っており、第1四半期(2016年3~5月)は売上高が前年同期比33%増、営業利益は58%増と大きく伸びている。電子書籍市場全体を上回るペースで成長しているメディアドゥの強みは、競合に打ち勝つ技術力にある。藤田恭嗣社長は4月の決算説明会で、競合優位性を問う質問に対して「当社はテクノロジーで評価され、出版社から相談を頂いている」と説明。その一例として、2016年に入り、漫画を縦方向にも横方向にも自在にスクロールできる技術で国内の特許を取得。海外でも特許出願中だ。
2015年11月には電子書籍の月間配信能力を、従来の30倍となる月間60億ダウンロードへ増強。漫画の「1話無料」などの試読キャンペーンが増える中で、電子書店がメディアドゥの配信インフラを使えば、1ダウンロードあたりのコストを低く抑えられるメリットを強調して業容を拡大している。
新規取引の開拓も順調だ。2016年4月からは楽天のスマホ向けサービス「楽天マンガ」向けにも、「LINEマンガ」と同様、コンテンツとシステムの独占提供を開始。藤田社長は「本格的なサービス展開を5月以降に始め、堅調に推移している」と自信をみせる。
主力の国内電子書籍事業に加えて、メディアドゥが将来的な成長ドライバーと見込んで育成するのが、海外展開と電子図書館事業だ。2016年6月には「日本のコンテンツと、メディアドゥのシステムの輸出拠点」(藤田社長)として、米国に子会社を立ち上げた。電子図書館事業は、楽天傘下の米電子図書館サービス大手オーバードライブと組み、運営する自治体などへ、期間や回数を定めて電子書籍を貸し出す権利を卸売りする事業。海外の配信図書館数はすでに100館を突破しており、今後、国内でも普及が進む可能性がある。海外と電子図書館で、メディアドゥはさらなる飛躍を狙う。
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