ニース「自爆テロ」を"正当化"する側の論理 イスラム過激派「テロは殉教で自殺ではない」
またもやフランスで大規模テロ事件が発生した。7月14日、フランスの観光地ニースで、フランス革命記念日の花火を楽しむために集まった群衆を、チュニジア国籍を持つ男性が運転するトラックが暴走してなぎ倒した。84人の死者が出た。この事件はIS(イスラム国)と直接の関係がないことが明らかになりつつある。しかし、その影響があったかどうかは、犯人が射殺されているためわからない。
本場シリア・イラクのISは、支配領土を大きく縮小させている。2014年6月、イラク第二の都市モスルを占領したピーク時と比べると、支配領域はもはや6割程度ではないか。バクダッド近郊のファルージャをイラク政府軍に奪還され、モスル奪還作戦も視野に入る。シリアでは北部の大都市アレッポを、シリア政府軍とロシア軍が奪還作戦を進めている。
このように押し詰められ、シリア・イラクでの支配領域の消滅が視野に入ったISだが、反比例して、リビアなど海外に勢力を拡大、テロ攻勢を強めているのだ。
自爆テロは少ない人数と費用で衝撃が大
各地のテロ事件には共通点がある。それはISに忠誠を誓う個人、小グループによる、自発的な自爆攻撃だ。自身の命を捨てての乱射や自爆テロである。
自爆テロは少ない人数で相手に多大な損害を与えることができる。2015年11月に発生したパリ同時多発テロ事件は、死者130人、負傷者352人の被害を与えたが、実行犯は10人程度で、費用も3万ユーロ程度と推測される。信仰や信念で染め上げた、死を恐れぬ少数の若者を動かすことができれば、わずかな人数と費用で、世界に衝撃を与えることができる。こうしたテロを水際作戦で防ぐことは、パリ同時多発テロ事件後、全国に非常事態体制を敷くフランスが防止できなかった例をみても、かなり困難である。テロリストは警戒態勢の網をくぐり、好きな場所と時間を選べるからだ。世界はイスラム過激派による自爆攻撃の脅威に直面する。
ビジネスに例えることが適切かどうかわからないが、わずかの資源投入で多大な効果が得られる自爆攻撃は、テロ業界の"イノベーション"ともいえるだろう。
現代の自爆テロは1983年のベイルートで始まった。ベイルートに駐留していた米国海兵隊の宿舎が自動車爆弾によって破壊され、一度に241人の死者を出した。1日の米海兵隊の死者としては、1945年の硫黄島の戦いに次ぐもの。この事件後、世界最強を謳われた米海兵隊は、有効な反撃もできずにレバノンから撤退する。犯行グループは、イランやシリア・アサド政権の支援を受けたレバノン南部に拠点を置く、シーア派武装政党ヒズボラ(神の党)だった。
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