ニース「自爆テロ」を"正当化"する側の論理 イスラム過激派「テロは殉教で自殺ではない」

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自爆テロの遺族は、組織や基金によって金銭的に丁寧に遇される。レバノンのヒズボラは遺族に対する支援組織を構築している。おそらくシーア派固有の聖人である、イマーム・アリー、フセインの部分を除くと、ISに代表されるスンニ派自爆テロの合理化も、「ジハードによる殉教は自殺ではなく天国への直行ルート」、という構成だろう。

ところが、スンニ派が採用した自爆テロで最も有名なテロは、2001年9月11日の米国同時多発テロであるが、スンニ派自爆テロは必然的に、敵対する宗派シーア派に向かうことになる。

この7月3日、イラクの首都バクダッドで、スンニ派のISが断食月(ラマダン)明けの祭りに集まったシーア住民を攻撃した自動車爆弾テロでは、一度に242人が死亡した。今では自爆攻撃は元祖シーア派より、ISの代表とされるスンニ派が活発、という皮肉な事態になっている。

ソフト・ターゲットが狙われる

イスラム教徒のうち、ISやアルカイダに代表されるサラフィー・ジハード主義者の割合は、ごく少数。ほとんどの信徒は、イスラム教に即した安全で穏やかな生活を望み、実践している。しかし、少数だがテロリストは存在し、世界に拡散する。

彼らは、最も弱く、人が集まり、攻撃しやすい場所を、ソフト・ターゲットして狙う。空港や鉄道、バス、競技場、集会所、宿舎、バーなどが、対象にされやすい。

8月に開催される、ブラジルのリオ・オリンピックが無事に終わることを、祈るばかりだ。

参考文献:『ヒズブッラー 抵抗と革命の思想』(現代思潮新社、2015年)

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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