ニース「自爆テロ」を"正当化"する側の論理

イスラム過激派「テロは殉教で自殺ではない」

こうした自爆攻撃は、シーア派と対立するスンニ派にも波及し、ハマスやアルカイダ、ISに拡がっていった。

実は、イスラム教を旗印にするテロ組織が自爆攻撃を採用することは、乗り越えらなければならない、心理的な壁=宗教の掟があった。「汝、殺すなかれ」という掟である。この掟の起源はモーセの十戒にある。ユダヤ教起源の掟だが、姉妹宗教であるキリスト教やイスラム教も、モーセの十戒を継承する。

「汝、殺すなかれ」という掟からは、他人を殺害してはならない、という規定を容易に汲み取ることができる。が、実はこの掟には、「自分を殺してはならない」という意味もある。つまり自殺は罪なのだ。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、それぞれ独立した宗教になっているが、同じ神を信じており、共有する信条があるので、アブラハムの宗教とくくられる。アブラハムの宗教では、他殺と自殺は罪。だから、自殺者の比率は低い。厳格なカトリック教会では、第2ヴァチカン公会議後のリベラル化に反して、自殺者の葬儀や終油を拒否する神父(司祭)も多い。結局、自殺者は、天国に行く可能性を絶たれることになる。

自爆による殉教は自殺ではない

イスラム教でも自殺は罪である。人間の命は神によって与えられ、神によって閉じられるからである。自分で死んではならない。こうした教えは伝統であった。イスラム過激派にとって、シーア派かスンニ派かを問わず、最初の壁は、「汝、殺すなかれ」の掟を維持しながら、自爆攻撃を合理化する宗教上の解釈が必要だった。

1983年に米国海兵隊を撃退した、シーア派武装政党ヒズボラの理論をたどろう。

「自爆攻撃による殉教は自殺ではない」というのが結論だ。「自殺は失望、絶望、挫折の表現だが、殉教は現生の生活を愛し、執着し、現世の生活を手放す理由のない、若者によって行われる自発的行為」、とされる。異教徒や抑圧者へのジハードに自発的に参加し、命を捧げた若者は、殉教者として神の祝福を受け、直ちに天国に行くことができる。

シーア派では、宗派最大級の聖人である、イマーム・フセインが殉教者の模範となる。預言者ムハンマドの孫イマーム・フセインは、イスラム共同体(ウンマ)を簒奪したウマイヤ朝に抵抗するため、死ぬことを予想しながら、カルバラ(現在のイラクにあるシーア派最大の聖地)に向かったからだ。イマーム・アリー(イマーム・フセインの父親)は「死ぬことに生を見出すことは勝利」と述べている。さらに「敵が圧倒的に強く、イスラム教共同体が幸福か忍耐かを迫られたときは、いかなる代償を払おうと、ジハードと殉教の出番になる」と自爆テロリストを鼓舞している。

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