星野リゾート「星のや東京」が担う重大使命 1泊7.8万円の日本旅館は世界に通用するか
その理由を星野氏は「旅館というスタイルが時代に合わなくなったから」と説明する。日本の文化を体験するにはいいが、宿泊施設としては、西洋ホテルの快適性や合理性のほうが便利と考える人が増えたため、旅館は徐々に軒数を減らしていったという。
星野氏はこれまで、地方の旅館やリゾート施設の再生にあたっては、地域ならではの魅力や来訪動機を作ることで、市場を創り出し、宿泊客を増やしてきた。
すしは新しいマーケットを創り出した
東京にはなおさら、日本旅館に泊まろうというマーケットは存在しない。そこで従来の純日本旅館ではなく、進化した日本旅館に泊まりたいというマーケットを創造することを、最大の目的に掲げる。
そのために「星のや東京」では建物や内装は日本旅館のスタイルにこだわりながらも、ベッドや畳ソファなど西洋の生活スタイルを取り入れた作りとなっている。
「星のや東京」の先に描くのは世界への進出だ。なぜ日本の会社が海外で宿泊施設を運営するのか。西洋文化に根付いたホテルではなく、日本の文化に根付いた旅館なら簡単に説明できる。その意味でも、「日本旅館が世界の都市で通用するだけの機能性、利便性、サービス性を整えて、建築や備品なども含めて快適だ、という(世界の)顧客の認知を『星のや東京』で何としても得る必要がある」(星野氏)。
星野氏が例示するのが、すしのケース。1980年代、米コーネル大学院でホテル経営を学んでいた頃、同級生にすしを食べさせても、「生魚は食べられない」人がほとんどだった。
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