ベントレー、3500万円超の車は何がスゴいか

旗艦の新型「ミュルザンヌ」に乗ってみた

新型ミュルザンヌはステアリングの応答性にいささかの妥協もない。俊敏に動く。四角いボディは見切りもよく、いい意味で大きさを感じさせない。ムハンマド・アリのようなヘビー級なのである。

ベントレーはオウナーが運転するクルマ

アラビカ色のミュルザンヌ。グリルがよりワイドになって縦方向のスリットが入った

伝統の6.75リッターV8 OHVユニットは2基のターボチャージャーによって、最高出力512psを4200rpmで、1020Nmという猛烈に強大な最大トルクを1750rpmの低回転域から3250rpmまでの広範囲で生み出す。このV8ユニットこそ、ミュルザンヌにとってのフラット6である。ソウルである。水平対向6気筒のない911がありえないように、ロールズ・ロイス時代からの遺産であるV8のないベントレーの旗艦はありえない。

ミュルザンヌの開発陣はコンチネンタルGT等に使っている6リッターW12ターボを実際に載せてみたという。ところがトルク特性が違う。W12ツインターボも人外魔境的トルクを生み出す名機ながら、ようするに高回転型に過ぎる。ミュルザンヌのV8ターボときたら、市街地だと1100rpm、アイドリングに毛が生えたぐらいの低回転で軽やかに走らせる。こんな芸当ができるエンジンはいまのところディーゼルにも存在しない。

乗り心地はリアのサスペンションの改良、具体的にはエアサスの容量が増やされた。これによりフラット感が増し、常に路面とタイヤがコンタクトしている太平楽な感じが生まれた。静粛性、リファインの部分ではアクティブエンジンマウントと新しいプロペラシャフトの採用、さらにボディ剛性が上がったことも効いているという。

よく言われることだけれど、ロールズ・ロイスのクラブは「ロールズ・ロイス・オウナーズ・クラブ」というのに対して、ベントレーのそれは「ベントレー・ドライバーズ・クラブ」を名乗る。ベントレーの運転手さんのクラブではありません。ベントレーはオウナーが運転するクルマなのだ。クラブ名はそれを誇らしげに主張しているのである。そのようなブランドであるベントレーの旗艦に、さらにドライバーにフォーカスを当てたスピードが登場したのは寿(ことほ)ぐべき事態である。

写真ではわかりにくいが、いわゆるブリティッシュグリーンである。スピードはバンパー下部に補助ランプがつく

ミュルザンヌ スピードは、V8ツインターボに25ps強力な最高出力と80Nmぶ厚いトルクを発生せしめ、10mm車高を下げたモデルである。しかしながら、仮にお金がジャブジャブあったとしても、筆者ならノーマルを選ぶ。標準モデルで3500万円、スピードだと3835万円もする値段のことはとりあえず忘れよう。つまり、こういうことだ。

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