為替はほとんど金融資産市場で動く
現在の株価の上昇、円安進行がまさにそれで、期待インフレ率の上昇が、株高、円安となっているのだ、という。これは、債券市場において、名目金利が大幅には上昇していない、つまり、長期国債価格が下落していないことと矛盾する。
自然に考えれば、株価が上昇したのは、安倍政権の派手なアクションが、日本株をみなが買うのではないか、という期待を動かし、「我先に」と、日本株への買いが殺到したために、その結果、株価は上がり、株価の上昇は、さらなる日本株への買いを呼び込み、株価は上昇トレンドを形成した。
円安についても同様で、円高から円安へのトレンドの変換タイミングを待っていたトレーダーたちが、「さらなる強力な金融緩和政策」というストーリーをきっかけに、流れを作った。為替水準というものは、長期においてすら購買力平価(国際的にも同じものは同じ価格となるように、為替水準が調整される、あるいは、その水準に為替は収束するという考え方)が成り立たなくなったいま、水準に対しては、正しい水準というものは存在しない。
為替はほとんどすべて金融資産市場で動くようになっており、例えば、日米の国債金利差でドル円の動く方向は決まる。しかし、これは金利差が拡大すればドル高方向に動くのであるが、その変動方向は決まっても、為替水準については何も決まらない。今が1ドル90円なら、金利差が1%拡大すれば、10円動くという分析が仮に正しいとしても、それは足元が1ドル80円でも90円でも100円でも、おおむね同じことなので、今の90円が正しい水準かどうかは永遠に分からない。
つまり、株高も円安も、日本の消費者物価が将来上がるから、それによる名目売上高の増加を見込んで、株価の名目値が上がったわけではないし、円安も期待インフレ率の上昇で、インフレ率込みの日米の債券投資利回りの裁定が働いて起きたものでもない。
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