期待の自己実現こそ金融資産市場の本質
投資家やトレーダーが買ったから、株価もドルも上がったのだ。
それだけだ。
そして、彼らが買ったのは、上がると思ったから買ったのだ。そして、その結果、上がったのだ。
ここに期待の自己実現がある。期待の自己実現こそ、キャピタルゲインを求めて投資する投資家が集まる金融資産市場の本質なのだ。
一方、財市場では、それは成り立たない。
投資のために買うのではないから、自分が使うために買う。その場合は、値上がりが起こりそうならば、買いだめをしておくか、というと、そんなことはない。必要に応じて買うのであり、給与などの所得が増えないと予想するのであれば、明日からパンが値上がりするのであれば、数日分は買いだめして冷凍するかもしれない。
だが、来月の分まで買いだめしておくことはできないし、来月からは、値上がりした分、品質が劣る安いパンにするか、ダイエットをかねて食べる量を減らすか、ホームベーカリーに切り替えて節約するか、ということになる。その結果、パンの需要は落ちるので、値上がりは実現しない。
エコポイントの期限切れの駆け込み需要で、一時的に大型テレビが品薄になり、最終日にテレビはカメラ量販店で大きく値上がりしたが、それ以降は大きく値を下げている。結果的に、テレビへの消費額は、トータルでは減ったため、テレビを中心とした家電メーカーは窮地に陥ったのだ。
つまり、モノの世界では、期待は自己実現しない。つまり、消費者物価は上がらない。したがって、上がるという期待は外れる。期待が外れるのであれば、その期待が起きない、と考えるのが、合理的期待形成理論であり(ここは論争がありうるが)、いずれにせよ、実現しない期待を持ち続けるのは愚かなので、起きたとしても短期にしか持続しない。
その結果、期待インフレ率はやはり上がらないのだ。
つまり、期待に働きかける金融政策は、金融資産市場では資産価格を動かす可能性はあるが、財市場には影響しない。したがって、リフレ政策では、インフレはもちろん、インフレ期待も起こせないのである。
今度こそ、日本は変わる、という期待を期待インフレ率の上昇ではなく、別の理由で株価は上昇し、円安が起きている。
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