コンビニ店長、「学生バイト搾取」の巧妙手口 これがミーティングで使う内部資料だ!

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次の資料は、ミーティングで使うものではなく、アルバイトに配布される通称「アタック表」だ。

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求められる「アタック先」は非常に広い

商品名の横に、売り込み先が書いてある。これは、アタック先から考えると、主婦などのパート用のものである可能性が高い。

「幼稚園」「小学校」はもちろんのこと、「飲み屋」「クラブ活動 ママさんバレー」、さらには「理髪店 美容院」「塾 習い事」といったところまで候補になっている。まさに手当たりしだい、貪欲にアタックすることが期待されている。この大手コンビニチェーンのアルバイト経験者(20代・女性)によると、「空欄の中には、具体的な個人名を入れて、結果について報告しマル・バツをつけていく」のだという。ちなみに、オーナーとアルバイトの間でのミーティングは、勤務時間外に無給で行われるようだ。

壁に張り出される「目標」

最後は、「わたしの目標」として、それぞれの商品をいくつ売るのか、書き込む形になっている。フォントも大きく、店舗の壁に張り出されるような作りになっていることが分かるだろう。

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まるで営業マンのようだ

こうしたオーナーへの働きかけは、フランチャイズ・ビジネスの営業戦略としては合理的なのかもしれない。しかし、社会的に知識の乏しい学生の「戦力化」を公言するのはいかがなものか。特に、最近は金銭的にも余裕がない人も多いため、自腹で買い取らせることまでは明らかに行き過ぎだ。

NPO法人POSSE代表で『ブラックバイト――学生が危ない 』の著者である今野晴貴氏は、「自らの権利を教え、権利行使の手助けを社会がサポートしていく視点も重要」と話す。

「少なくとも学生のアルバイトに関しては、あくまでも『アルバイトとしての立場』を学生自身自覚し、契約の範囲で働く意識が大切だ。周囲もそれを促し、何よりも企業がきちんとこれを踏まえて雇用管理をすべき。困ったときには一人で悩まずに、私たちのようなNPO法人を含めた外部の相談機関を利用して欲しい」。(今野氏)

このように、「ブラック」化したアルバイトは、コンビニに限った話ではなく、業種に関係なく横行している。学生は、少なくともこうしたことを強制するオーナーの元で働くことをなるべく避け、悪質な店舗を「人手不足」の状態に追い込む行動を取るべきだろう。立場に対して過大な責任を押しつけられることを「仕方ない」と諦めてしまうと、労働市場の健全化を阻害することにもつながりかねない。

自分の人生を有効に使うためにも、そしてアルバイトをすることを考えている未来の後輩のためにも、実態について知り、適切な行動を取る心構えをもって、働く場を決めていくことが、大切だ。

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関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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