竹中直人「いいものは理屈を超える」

「監督・竹中直人」が語る役者哲学

とはいえ、役者の芝居は生なので、現場でいろいろと変化していきます。だから台本に縛られて決め込んでしまうとつまらない。右に行くものだと思いこんでいても、実際にやってみたら左に行った方が面白いということはよくあることです。だから土台をしっかりと作りこんだ上での、即興性、臨機応変さは大切にしています。

「私もそっちのほうがいいと思う」「だよな、そっちのほうがいいよね」という具合に役者とつながり合う瞬間が、次につながるステップになります。それは技術的なことではなく、相手を大切に思う気持ちが、自然とそうなっていくのだと思います。

俳優と監督、どうバランスをとるか

――俳優業と監督業をバランスよく両立しているようにも見えますが。

あまり両立ということは考えたことはないですね。ただ肩書きが違うだけで、役者も監督も文筆業も、みんなつながっています。僕にとっては一緒です。その場に自分を置いて、人を見る仕事なので、変わらないですよ。

――奥山和由プロデューサーとは、竹中さんの監督デビュー作である『無能の人』以来のタッグだと思うのですが。

奥山さんから「こういう話があるんだけど撮らない?」と打診されて、二つ返事で「やります!」と決めました。とにかく映画が撮りたくてしょうがなかったので、奥山さんに全部お任せしました。

――奥山プロデューサーの功績として、北野武監督や、竹中直人監督といった監督を世に送り出したことが挙げられます。竹中さんにとっての奥山さんはどのような人ですか?

僕よりも年上ですが、映画青年ですよね。監督以外でも、『RAMPO』や『226』『GONIN』といった奥山さんのプロデュース作に出させていただきました。映画に対して本当に飢えている、エネルギーを持った人。ただし熱さだけでなく、批判を吹き飛ばすような軽さもあって。魅力的な方だと思いますね。

脚本作りも全部奥山さんにお任せしました。その出来上がったものの構成を入れ替えたり、台詞を変えたりはしましたが、奥山さんは、それに対して口を出さなかった。非常にいい距離感と自由な形で、スイスイ作っていけました。

いい感じにキャスティングも決まり、ロケハンも順調、天気も順調。すべてが順調でした。『無能の人』の時も、雨で撮影が中止になることはありませんでした。やはり奥山さんと僕は相性がいいのかもしれません。

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