竹中直人「いいものは理屈を超える」

「監督・竹中直人」が語る役者哲学

ヒロイン抜擢の決め手は「空気感」

――今回のヒロインには、平田薫さんをオーディションで抜擢しています。そのときに役者を見る決め手は何になりますか?

直感ですね。理屈はないんですよ。「あっ…」という感じ。その人が帰った後に残す印象ってあるんですよね。空気感というんですかね。

最後にさわやかな気持ちになれるような映画にしたかったんです。縄で自分を縛る「自縄自縛」といえば、ヒロインに肉感的なイメージがあると思いますが、そういう映画にしたくなかった。僕がこの『自縄自縛の私』を読んで直感的に思い浮かんだのは、ショートカットの女の子。いくつか見た写真の中に、平田さんの写真があって、ぜひ会いたいと思いました。

それと声ですね。僕は女優さんを声で選ぶことが多いんですが、平田さんの声の音色がとてもすてきで、「あ、もうヒロインだ」と決まりました。そういう巡りあわせってあるんです。いいものは理屈を超えますからね。説明できるものは嘘くさい感じがします。

――俳優でもある竹中監督が、俳優を演出するやりやすさはあるのでしょうか?

人それぞれに価値観が違いますから、自分がわかることに対して、あまり過剰にはなりたくないですね。わかっているつもりでもわかっていないこともあるので。ある程度の距離感は大切にしています。俳優は僕にとって憧れの職業なので、役者さんの芝居を間近で見ていられるのは、本当に夢のような時です。

役者からどう芝居を引き出すか

――平田薫さん演じる主人公の立花百合亜は、自縛を密かな趣味としており、自縛をする平田さんの体のくねらせ方などは、何ともいえないエロティックさがあります。役者からそういった芝居を引き出す方法はあるのでしょうか?

自分で言うのも何ですが、役者は、いいスタッフやいい監督に巡り合えると、自然とその役柄になっていくんです。やはり役者が迷ってしまうと、それが画面に映ってしまうので、スタッフとしては、役者を迷わせてはいけない。演じやすい環境づくりがわれわれの仕事ですから。そういう意味で平田さんは非常にのびのびと演じてくれたと思いますよ。

(C)吉本興業
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