「世代間ギャップ」解消のヒントは仏教にあり ブッダに学ぶコーチング術

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会社のオフィスでも同じことがいえるかもしれません。同じ会社、同じチームに属していても、育ってきた環境も経験も人それぞれまったく違います。第一、もしチームの皆が金太郎あめのように同じような人ばかりだったら、どんなに頭数をそろえても、いい仕事は生まれません。それぞれ違う人が集まるからこそ、そこから新たな価値が生まれるのです。

ブッダに学ぶコーチング

さかのぼってみれば、ブッダ自身が「人はそれぞれ、違う」という考え方の持ち主でした。

ブッダは35歳で悟りを開いた後、80年の生涯を閉じるまで45年間、インド中を歩き、説法をされました。仏教ではそれを対機説法と言いますが、相手に合わせて法の説き方を自由自在に変えたのです。その数は八万四千とも言われますが、とにかく非常に多く、法を説く相手の数だけ説法の仕方があったということです。

では、ブッダは会うたびに言うことをコロコロと変える人だった?そういうことではありません。ブッダの説法は、「自分の考えを伝える」ことを目的にしているわけではないのです。法を説くということ。ものの道理を説くということ。それを通じて、相手が真理を悟ることができるようにと、導いたわけです。現代風に言うならばコーチのような役目として、その人自身が自ら悟ることができるよう、相手に合わせて説き方を変えたのです。

個人レベルで相手のニーズを汲み取っていくブッダの説法は、ビジネスで言うところのOne-to-One マーケティングとも重なるのかもしれませんが、ブッダの説法の場合は目的が「相手を悟りへ導くこと」です。それは、表層的なニーズではなく、心の最も深いところにある「目覚めたい」という悟りを求める心(菩提心)を呼び覚ます対話です。もしもブッダレベルのマーケティング力を身につけることができたなら、あなたは人を幸せにするビジネスマンとしてあちこちの企業から引っ張りだこになることでしょう。

私の普段の会話などはムダ話ばかりでブッダのようには到底いきません。ですが、せめて、人との会話は議論して説き伏せるようなことはせず、じっくりと相手の心の状況を見極めて、丁寧にお互いの心が明るくなるような対話をしたいものです。

松本 紹圭 光明寺 僧侶

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まつもと しょうけい / syoukei matsumoto

1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。蓮花寺佛教研究所研究員。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺の音楽会『誰そ彼』や、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。

ブルータス「真似のできない仕事術」、Tokyo Source「東京発、未来を面白くするクリエイター、31人」に取り上げられるなど、仏教界のトップランナーとして注目される。2010年、南インドのIndian School of BusinessでMBA取得。現在は東京光明寺(komyo.net)に活動の拠点を置く。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。全国各地で各宗派から意識の高い若手僧侶数十名が「お寺から日本を元気にする」志のもとに集結し、学びを深めている。

著書に『おぼうさん、はじめました。』(ダイヤモンド社)『"こころの静寂"を手に入れる37の方法』(すばる舎)『お坊さん革命』(講談社プラスアルファ新書)『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー21社)『脱「臆病」入門』(すばる舎)など。
 

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