中国人殺到!「愛知の急須」ここが斬新だった 地道な取り組みが生んだ、巨大な化学反応
中国での常滑焼人気はどのような経緯で起こったのだろうか。常滑焼の製造元で組織する「とこなめ焼協同組合」の竹内伸夫事務局長は次のように言う。
「2011年に、愛知県から北京で開かれる建材関係の見本市『中国(北京)国際建築装飾及材料展』に出展の誘いがあった。当時注力していた陶器浴槽に加えて、急須や招き猫なども持っていったところ、製造販売メーカー(鄭源)が急須に着目してくれた」
形状の「物珍しさ」から火が付いた
常滑焼と同じく日本六古窯に数えられる信楽焼(しがらきやき)が陶器浴槽の先行者として成功を収めていたので、国内市場の衰退に悩む常滑も、補助金などを活用して独自の技術を生かした陶器浴槽の開発に着手していた。「癒し」や「健康志向」を押し出して中国の富裕層向けへの売り込みを狙って出展したところ、ある程度の需要獲得に成功している。
しかし、中国側がより熱い視線を注いだのは、急須の独自性だった。中国の急須は注ぎ口と取っ手が一直線だが、日本の急須は注ぎ口と取っ手が直角の位置になる。それが斬新に受け取られたようだ。中国茶葉市場のメッカ、北京・馬連道の店に常滑焼の急須が並べられるなど、物珍しさから徐々に認知が広まっていった。
「正直、急須が売れるなんて思っていなかった。鄭源が急須を気に入ってくれたので、 当社を含む卸会社4社が提携を結び、中国での販売を開始した。現在は北京、天津、重慶の店で売ってもらっている」と、先出のまるふくの清水代表は破顔一笑する。
中国で広まった常滑焼人気は、その後日本国内にも波及する。常滑は市内に中部国際空港があり、中国や東アジアからのアクセスが便利なため、中国を中心とする訪日客が押し寄せてきた。「当社は常滑焼を中国に輸出していているが、(小売りで)売って欲しいというバイヤーが訪ねてくるようになった」(清水代表)。プロのバイヤーのほかに、個人やネット販売業者などさまざまな人が買い込んでいたようだ。
今年に入ってから為替が円高に傾いたことに加え、中国政府税関制度の厳格化で、手土産の範囲を逸脱した転売目的での中国への持ち込みが難しくなったことで、急須の爆買いはいったん落ち着いた。それでも、「今はある程度価値を理解してくれるお客さんが買いにきてくれて助かる」と、とこなめ焼協同組合の竹内事務局長は話す。
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