解散はどう決める?「波乗り」と「政治的景気循環」
首相がどのような要因に基づき解散を決定するのかについては、大きく二つの観点から議論されてきた。
一つは「政治的波乗り」といわれる考え方だ。政治学者の猪口孝氏が、日本の首相による衆議院解散の観察に基づいて導き出した含意である。「波乗り」という言葉から想像できるように、自らにとって最も望ましい局面、つまり予想される支持率が十分に高い状態や、競争相手の準備が万全でない状態で解散を決定するということだ。
これは、政権を握る首相が、自分に有利になるよう選挙のタイミングを決めることを意味する。政党間の競争条件を同じにして有権者の評価を仰ぐことに選挙の価値を置くならば、このように機会主義的な判断は、現職を利するだけであり、望ましくないと批判される。
もう一つは、解散権の存在が「政治的景気循環」を引き起こすという議論である。政権は単に「波乗り」しようとするだけでなく、次の選挙に向けた「自分たちに有利な環境の整備」にも積極的に取り組むという仮説だ。
政権に有利な環境とは、主に好調な経済状態を指し、政府支出の拡張、好況の演出から支持を広げることを狙う。しかし、それに伴いがちな放漫な財政運営姿勢は、無責任であるとして批判の的になる。
「政治的景気循環」という言葉からは経済政策が問題になりやすい。しかし、対外的な強硬姿勢をアピールして国民を煽り、支持拡大を狙うのも本質的には同じことだろう。
もちろん、政権を握るリーダーが常に自らにとって好ましいタイミングを選択できるとは限らない。今回のように、解散の時期を選択しても大敗する可能性は存在する。また「政治的景気循環」のように経済状態を操作する能力が、政府に備わっているかどうかにも疑問が残る。
しかしいずれにしても、解散権は現職が有利な状態で選挙を始める道具である、ということが十分に意識されなくてはならない。
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