努力は才能を凌駕する。AKB48と「和の心」 アイドル、あるいは努力している姿を常時見せる職業

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「直接頑張る機会」を作ったことでAKBは成長した

それまでのアイドルは、テレビの中で歌って踊るしか、頑張る機会がありませんでした。しかしAKBは違います。ファンとの握手会や、常時開催される(建前の)秋葉原劇場ライブなど、頑張ってみせる場所を設定し、その過程を公開。しかも「総選挙」という名の人気投票で、その努力の結果を総決算してしまう。

私は、AKBがこれほどまでに成長することができたのには、この「すぐそこにいるファンに向かって直接頑張る機会」を作ったことが大きかったのではないかと思います。

2012年の総選挙で、人気メンバーの一人、松井玲奈さんは「私なんてみなさんが応援してくれなかったらただの地味な女の子」と発言していました。努力型だよ、というアピールです。

事実AKBでは、天才型のメンバーは意外と選挙で下位に甘んじたり、それどころかどんなにプロモーションされても人気が取れず、去っていったりします。

またAKB全体のリーダー役を務める高橋みなみさんは、もっと壮絶にこう言っていました。

「努力は必ず報われると、私の人生をもって証明します」

さすがにトップに立つ人たちはアイドルの本質と、伝統的な「和の心」をよく理解していると感じます。

ただ、実はこうした「努力するアイドル」は長らく日本社会に不在でした。1970年代、80年代と華やかだったアイドル界は90年代に入り停滞。不思議なことにこれは、社会全体では「頑張れば夢がかなう」というメッセージが浸透していった時期でもありました。

しかしなぜ、ここに来て頑張るアイドルが大復権したのでしょう。

もしかすると「どんなに頑張っても自分の生活は変わらない」と感じている人が増えたのでは?

もはや現実の世界に夢を持つことを諦め、頑張っている女の子を応援することにすべてを捧げる人たちが、大きな消費集団を形成しているのではないでしょうか。それはいいことなのか、普通のことなのか。きちんと向きあわねばならないと思います。

 

撮影:今井康一

【初出:2013.1.26「週刊東洋経済(65歳定年の衝撃)」

 

(担当者通信欄)

括弧の中のこの部分→(どうも女性は同性については“たたき上げ”を支持し、異性に対しては“持って生まれたもの”を評価する傾向があるようです)、ドキッとしました。同性の「持って生まれたもの」を心の奥深くでは痛いほど評価しているゆえに、持って生まれなかった自分を鼓舞したくて、つい努力型を応援してしまうのかもしれません。(笑)

さて、堀田純司先生の「夜明けの自宅警備日誌」の最新の記事は2013年1月28日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、日立に学べ!最大の危機こそ変革のチャンス)」で読めます!
【なぜ現代は、ゾンビルネッサンスなのか】
『ゾンビ襲来』、『ゾンビ経済学』、バイオハザードの新作など、ゾンビの話題に事欠かないこのごろ、なぜ「ゾンビ」は再び注目を集めているのでしょうか?

 

堀田先生の近刊紹介。中年の青春小説『オッサンフォー』(講談社、2012年)。詐欺師四人組が大阪を舞台に繰り広げる事件も、ぜひ本コラムとごいっしょに♪

 

大好評、堀田先生主宰の電子雑誌「AiR3」(2012年リリース)。漫画家、作家、研究者、ジャーナリスト…豪華執筆陣にも大注目です!  

 

実は哲学ってライトノベルで入門できます。たとえば、金髪はの子がデカルト。『僕とツンデレとハイデガー』(講談社、2011年)

 

 

堀田 純司 作家

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ほった じゅんじ / Junji Hotta

1969年3月8日、大阪府大阪市生まれ。桃山学院高等学校を中退後、大検を経て、上智大学文学部ドイツ文学科卒業。漫画誌編集者などを経て自身の著作を発表するようになる。文芸、科学、社会問題、メディア、ポップカルチャー等々、幅広く関心を持つ。著書に“中年の青春小説”『オッサンフォー』(講談社、2012年)、『僕とツンデレとハイデガー』(講談社、2011年)、『人とロボットの秘密』(講談社、2008年)などがある。編集者としても『生協の白石さん』(講談社、2005年)などのヒット作を手がけている。2010年には各分野の書き手とともに「作家が自分たちで作る日本で初めての電子雑誌」『AiR(エア)』を刊行し注目を集めた。続く『AiR2(エアツー)』(2011年)、『AiR3(エアスリー)』(2012年)も好調に刊行。
⇒【Twitter(@h_taj)

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