「直接頑張る機会」を作ったことでAKBは成長した
それまでのアイドルは、テレビの中で歌って踊るしか、頑張る機会がありませんでした。しかしAKBは違います。ファンとの握手会や、常時開催される(建前の)秋葉原劇場ライブなど、頑張ってみせる場所を設定し、その過程を公開。しかも「総選挙」という名の人気投票で、その努力の結果を総決算してしまう。
私は、AKBがこれほどまでに成長することができたのには、この「すぐそこにいるファンに向かって直接頑張る機会」を作ったことが大きかったのではないかと思います。
2012年の総選挙で、人気メンバーの一人、松井玲奈さんは「私なんてみなさんが応援してくれなかったらただの地味な女の子」と発言していました。努力型だよ、というアピールです。
事実AKBでは、天才型のメンバーは意外と選挙で下位に甘んじたり、それどころかどんなにプロモーションされても人気が取れず、去っていったりします。
またAKB全体のリーダー役を務める高橋みなみさんは、もっと壮絶にこう言っていました。
「努力は必ず報われると、私の人生をもって証明します」
さすがにトップに立つ人たちはアイドルの本質と、伝統的な「和の心」をよく理解していると感じます。
ただ、実はこうした「努力するアイドル」は長らく日本社会に不在でした。1970年代、80年代と華やかだったアイドル界は90年代に入り停滞。不思議なことにこれは、社会全体では「頑張れば夢がかなう」というメッセージが浸透していった時期でもありました。
しかしなぜ、ここに来て頑張るアイドルが大復権したのでしょう。
もしかすると「どんなに頑張っても自分の生活は変わらない」と感じている人が増えたのでは?
もはや現実の世界に夢を持つことを諦め、頑張っている女の子を応援することにすべてを捧げる人たちが、大きな消費集団を形成しているのではないでしょうか。それはいいことなのか、普通のことなのか。きちんと向きあわねばならないと思います。
撮影:今井康一
【初出:2013.1.26「週刊東洋経済(65歳定年の衝撃)」】
(担当者通信欄)
括弧の中のこの部分→(どうも女性は同性については“たたき上げ”を支持し、異性に対しては“持って生まれたもの”を評価する傾向があるようです)、ドキッとしました。同性の「持って生まれたもの」を心の奥深くでは痛いほど評価しているゆえに、持って生まれなかった自分を鼓舞したくて、つい努力型を応援してしまうのかもしれません。(笑)
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