日銀が最悪の結末の中で死守したもの 2%の物価安定目標に秘められた真実

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物価安定とは、2.0周辺でぴたっと止まっている状態だ。誤差や、多少のぶれはあるが、2%を軸に安定していると言うことだ。その状態に落ち着くには、時間がかかる。その前にオーバーシュートする可能性もある。

そうなってくると、2%で安定させる、というのは理論的にも、金融政策の実務的にも「正しい」目標となる。意図的に「2%にする」のは、正しくない。わざとインフレ率を上げるのは望ましくない。しかし、経済が正しい姿に戻ったときに、物価上昇率は2%を軸に安定している、というのは正しい状態であり、それを目指すのは「正しい」のだ。

白川総裁、そして、日銀は、金融政策として「正しい」目標を設定することに成功したのだ。政治家が満足するという制約条件を満たしつつ。

素晴らしい。

今後も、おそらく3月末までだろうが、白川総裁の「正しい」金融政策を追求する手腕に期待し、その姿に私は感銘を受けることになることが予想される。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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