疑惑・ニイウスコーの破綻とIBM、トーマツの影
4月30日に民事再生法の適用を申請して事実上倒産したニイウスコー。週刊東洋経済が不正会計疑惑を追及していた同社は、取引28行に約300億円の債務株式化を要請していたが不調に終わった。システム納入で取引関係が深い主力の三菱東京UFJ銀行にも見放された。グループ2社の実質負債額は558億円。
最終的に社内調査で明らかになった粉飾決算は過去5年にわたった。リース会社をかませた循環取引などにより、ひどい年には183億円もの営業利益を水増し。実際には3年前から債務超過に陥っていた。この間、同社は2度の公募増資を実施し133億円を調達、一方で原資がないにもかかわらず年間10億円以上の配当を続けていた。
同社は週刊東洋経済報道後の昨年11月に経営の主導権が投資ファンドに移り、経営陣が入れ替わった。まもなく、不正に関する内部告発が複数から寄せられた。「これ以上続けることができないと判断したのでは」と現経営陣は語る。
監査法人も責任重大
「調査前はこれほど大きな額になると思わなかった」。関係者でさえ驚く巨額の粉飾はなぜ起きたのか。一因として挙げられるのは、設立時からトップを務めた末貞郁夫・元会長兼社長のワンマン経営と、その下での過度なノルマ主義だ。「ハンドレッド・パーセント・クラブ」と称して成績優秀な営業マンに海外旅行を与え、業績連動報酬は最高で数千万円にも上った。
こうした企業体質は、母体企業の一社で、主要仕入先でもある日本アイ・ビー・エムから引きずったものとの指摘がある。末貞元会長をはじめ、不正の中心人物と目される40代前半の元幹部2人はいずれも日本IBM出身。3年前、同社の金融部門では不正会計が発覚してもいる。偶然にもニイウスの粉飾行為が悪質さを増したのはその直後だ。
今後は監査法人トーマツの責任がクローズアップされる可能性もある。関係者によると、週刊東洋経済の記事が出た後、ニイウスは身の潔白を主張する「意見書」を銀行などに提示したが、その作成を依頼した第三者にはトーマツも含まれていたという。ファンドによるデューデリジェンスに会計士が立ち会ったとの証言もある。取材要請に対してトーマツは「個別案件には答えられない」との姿勢だ。
(高橋篤史、井下健悟、許斐健太 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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