なぜ日本の即席麺は世界ブランド化できたか ガラパゴスから世界のリーダーへ

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カテゴリー名称への疑問

そんな中でふつふつと湧いてきた大きな疑問が、人類にとって有用で広く愛されている「インスタントヌードル」という食品カテゴリーの地位がなぜかくも低いのかという点であり、そしてこんな大事なことが世界ラーメンサミットのテーマとして取り上げられていなかったことでした。

同じく小麦を原料とする「パスタ」と比較してみてください。どちらも基本は同じ。小麦を練って細長く成型・乾燥して作った製品を、好みの硬さにゆで上げてスープ・ソースや具材を絡めて調理する。機能的に大差はありません。しかしインスタントラーメンを同じように袋詰めで売られている各種パスタ製品と比較すると、情緒性・イメージが全然違います。世界中でパスタのほうが尊重されています。はるかに高い値段で売れています。

つまり、私たち受け手の側に「パスタ=農業製品、本物の食品、スローフード、普通~高級品」「インスタントヌードル=工業製品、インスタント食品、ファストフード、普及品」という、事実に比してあまりに大きなイメージギャップが出来上がってしまっている。しかもそれが「仕方のないこと」のように半ば諦念を持って受け入れられているのです。

これは一体何ゆえでしょうか? 

早急にイメージアップに取り組むべき

商品情報やブランドストーリーの発信、パッケージング、価格設定、流通施策、広告・PRなどの分野で工夫の余地は大いにあると思いますが、根本的な問題はカテゴリーのネーミングです。「インスタント」にはどうしても「本物の代替品」というイメージが付きまといます。

ですからネスレは20年も前から「インスタントコーヒー」に代わる呼称として「ソリュブル(soluble=水溶性)コーヒー」という中立な用語を提唱し、その普及を図っているのです。インスタントヌードルは中国語でも「方便面」すなわち便利な麺、と呼ばれており、その地位は決して高くありません。

これはカテゴリー全体の問題であって、早急にイメージのアップグレードに取り組む必要があります。インスタントヌードル全体のイメージ向上に成功すれば、この業界に新たな展開が生まれるはずです。こうした点も、日本企業がビジョンと戦略を持って世界をリードしていくべきだと思います。さもないと中国やインドネシアなどの巨大メーカーに高級化路線の先鞭をつけられかねません。

岡崎 茂生 フロンテッジ ソリューション本部副本部長

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おかざき しげお / Shigeo Okazaki

1981年東京大学教育学部卒業、1989年ピッツバーグ大学経営大学院MBA。1982年電通入社、2006年より北京駐在。北京電通 ブランド・クリエーション・センター本部長を経て、現職。30年におよぶ広告・マーケティング領域での経験をベースに、中国企業をはじめタイ、アメリカ、韓国、日本企業などを対象に幅広くブランド戦略コンサルティングを行なう。アジア各国およびアメリカの大学/大学院でのブランド講座・公開セミナー、フォーラムでのスピーチ、雑誌連載など多数。チュラロンコン大学商学部マーケティング学科客員准教授、南京大学ジャーナリズム&コミュニケーション学院客員教授、湖南大学ジャーナリズム・コミュニケーション&映像芸術学院客員教授。

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