なぜ日本の即席麺は世界ブランド化できたか ガラパゴスから世界のリーダーへ

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安藤百福さんの先見性と構想力

実際に参加して私が感銘を受けたのは、日清食品がイニシアティブをとって世界のインスタントヌードル業界の成長・発展をリードしているという事実です。WINAは、インスタントヌードルの発明者である安藤百福さんが97年に提唱して設立され、製品の品質と安全性向上、世界市場での消費拡大、災害時の食糧支援などの活動を行っています。

生産量では「康师傅」が世界一となりましたが、業界をリードしているのは間違いなく日清食品です。今回のサミットでWINAの新議長に就任した魏应州さんも、スピーチの中で安藤百福さんへの尊敬の念と感謝を繰り返し述べていました。

元来日本市場に特化して発達した業界は「ガラパゴス化」するのが常ですが、このように日本発の商品カテゴリーが日本企業のリードによってグローバル規模で発展しているケースは珍しいと思います。

その要因は、1958年にインスタントヌードルを発明した安藤百福さんが、人類に有用だと信じたその製法技術をあえて自社内にとどめなかったこと、そしてWINAを創設して自らインスタントヌードルのグローバル化に尽力したことにあります。すべては彼の高い倫理観と雄大な構想力の賜物です。

また、私自身は「ラーメンCMフェスティバル」の審査委員長として、各国からエントリーされたテレビコマーシャルを審査する機会をいただき、世界の食品会社がインスタントヌードルをどのようにローカライズしているのかを知ることができました。

「雨の日はラーメンを」

大変参考になったのが、日本以外(つまりグローバル市場)でのマーケティング発想の柔軟性です。たとえば、インドネシアのPT Indofood社が実施した「雨の日はラーメンを」という消費機会創造キャンペーン。ともするとコモディティ化しイノベーションをあきらめがちなこのカテゴリーの消費を活性化するために、テレビCMを活用して「しとしと雨の降る日は家であったかいラーメンを」と提案した同社のキャンペーンは、雨の多い東南アジアの特性を生かした市場拡大への戦略的チャレンジの好例です。

また、中国のラーメン文化の深さと豊かさにもあらためて感服しました。広い国土の各地に伝わる伝統的レシピを忠実に再現した地域密着型インスタントヌードル新製品の数々。それは小手先の技術による差別化のための差別化ではなく、麺文化の多様性に基づいた本格的なバリエーション展開です。日本メーカーにとって大きな学習ポイントだと思いました。

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