ポスト・モンティ体制を巡るローマ人の物語 景気・経済観測(欧州)
おりしも、総選挙が行われる2月末にかけては、米国で債務上限の引き上げや自動歳出削減プログラムの発動回避をめぐって、オバマ大統領と議会多数派の共和党との協議が大詰めを迎えているとみられる。こうしたタイミングで、欧州危機再燃の引き金となりうるイタリアの政局不安が意識されれば、市場に緊張が広がる事態が予想される。
下院では民主党会派が安定議席を確保する公算
「ポスト・モンティ体制」を占ううえで、イタリアの議会・選挙制度について触れておく必要があろう。イタリアの議会は二院制を採用しているが、日本の衆議院の優先議決権のような制度はなく、上院と下院がほぼ対等な権限を有する。イタリアでは法案の採決が内閣の信任投票を兼ねることが多く、安定的な政権運営には上下両院で同一会派が多数派を形成することが望ましい。
両院ともに有権者は個人ではなく政党に投票し、最多票を獲得した政党に54%の議席を割り当てる“多数派プレミアム付きの比例代表制”が採られている。議席の獲得には、一定割合以上の獲得票率が必要になる。例えば上院では、連立を組む複数の政党が合同の比例名簿を提出した場合には合わせて20%以上、連立に加わった各政党が3%以上、連立に加わらなかった各政党が8%以上の獲得票率が必要となる。したがって、上記要件を満たした政党の間で、多数派政党に割り当てた残りの議席を比例配分することになる。
世論調査でリードするのは、これまでモンティ政権を支えてきた二大政党の一角・中道左派の民主党の連立会派だ。支持率調査では40%前後の支持を獲得し、20%強で続く自由の人民と北部同盟による中道右派の連立会派、20%弱に支持を伸ばすモンティ首相を支持する中道連合、15%弱に支持を落とす五つ星運動(反緊縮・反ユーロを標榜する新興政党)をリードする(図)。民主党会派が獲得票率で過半数を確保することは難しいが、多数派プレミアムにより下院での安定議席を確保する可能性が高いと目されている。
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