離脱派を先導した「英国独立党」の危険な素顔 隠れ人種差別主義者の政党はどこに向かうか

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この頃、キャメロン保守党党首はUKIPを「変人、狂人、隠れ人種差別主義者の政党」と呼んだ。「移民数を減らす」=「人種差別主義者」と解釈された。多様な人種が生きる英国で「人種差別主義者」は最も強烈な批判の表現の1つだ。

キャメロン氏がUKIPを揶揄の対象とするのも無理はなかった。元保守党員であったファラージ氏は保守党右派の支持を受けるようなっていたからだ。泡沫政党と思われていたUKIPはいつしか、保守党のライバルと見なされるようになっていた。

国政よりも地方議会での議席獲得に力点

いったんは党首を降りたファラージ氏は2010年に復帰する。

それまでの選挙で分かったのは、UKIPの支持者層は白人で教育程度が低く、ブルーカラー労働者層となる人々であることだった。そこでUKIPはこの層を対象にさらに支持を呼びかけることにし、国政よりも地方議会での議席獲得に力を入れた。

この層は、今回の国民投票で離脱に投票をした層と重なる。反エスタブリッシュメントという点も共通している。労働者の政党、労働党の従来の支持者でもある。この層がEUからの新移民の流入に最も影響を受けやすい。同時にEU懐疑派が多い保守党の右派(教育程度が高い人、裕福な人も含まれる)にもUKIPの支持者がいた。

2014年、UKIPは地方議会で163議席を獲得。前回よりも128議席多く獲得し、急成長ぶりを見せた。そして全国的に大きな注目を浴びたのが同年5月の欧州議会選挙。11議席増やして24議席を獲得したが、英国に割り当てられた総議席数73の中で、最多数となった。保守党を抜いて第1党となったのである。

EUからの脱退を目指す政党が欧州議会で第1党になったのは非常に奇妙だが、英国民の反EUの姿勢はこの時点ではっきりと示されていたともいえるだろう。ただ、当時はまさか英国がEU離脱を決定するとはだれも思っていなかったのだが。

UKIPの躍進を見て、黙っていられなくなったのは保守党右派の議員たちである。議員2人がUKIPに転向した。

2015年5月の総選挙。UKIP支持の勢いを感じたファラージ氏は下院議員として立候補する。これまでに数回トライしたが、すべて負けている。今回こそは…という思いがあった。

英国の総選挙は1票でも多ければ、その候補者が勝つ仕組みを取る。どれほど多くの得票があっても、その地区でトップになったかどうかが勝敗を決める。こうした仕組みの下で、UKIPの候補者は約390万票を集めたが、当選者は1人のみ。ファラージ党首も落選した。

次ページ390万票あっても、なぜ1議席か
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事