英国のEU離脱が、国民投票により決定された。この出来事は、欧州の政治面においては、極めて大きな出来事として歴史に刻まれよう。今後も政治面では、EU残留を望んでいたスコットランドの英国からの離脱、ほかのEU加盟諸国による脱退追随の動きが考えられるほか、そこまで至らなくてもEUに対して懐疑的な諸政党の欧州各国内での勢力伸長、欧州諸国の結束が弱体化したとみての中国やロシアの動静など、目の離せない動きが続くと見込まれる。
また、市場においては、国民投票は、格好の売買の「ネタ」になった。特に時間的に、個々の地域の開票結果が刻々と公表される中、最終的な結果確定に至るまでの間に主要先進国の中で、現物株式市場や為替市場が取引されていたのは幸か不幸か東京市場であった。
日本の投資家は「お手本」がない中で右往左往
日本の投資家の気持ちとしては、まずお膝元の欧州株式市場やロンドンの為替市場、あるいは世界最大の米国の株式・為替市場で、英国のEU離脱という歴史的出来事が、マーケットにどの程度のインパクトを与えるのか、「お手本」を示してもらった後、日本株としてどのくらいの株価変動が妥当なのか、見定めたかったというところだったろう。
しかし、最初に日本の投資家中心に判断しなければならなかった(もちろん、欧米の主要先物指数の夜間取引は行なわれていたが)ため、日本の投資家は「お手本」がないなか、右往左往する宿命を負わされた。
加えて、当初は、残留派議員を狙った射殺事件により、EU残留を支持する同情票が入るのではないか、あるいは投票率の高まりが見込まれたため、普段はあまり投票に行かない都市部の若い残留支持派からの票が多く集まるのではないか、との観測から、フライング気味に、内外株式市場は残留に賭ける動きを示していた。それが離脱優位という情勢になったため、期待から失望への反動も大きかったと言える。
こうした、日本の投資家が自律的に動けないこと、また残留期待から離脱懸念に市場心理が大きく振れたことに、投機筋が乗じて、東京市場ではまれにみる株価や為替相場の大変動となったわけだ。6月24日(金)の主要国株価指数の前日比下落率をみると、お膝元の英国FT100が3.14%にとどまり、ドイツDAXが6.82%、フランスCAC40が8.04%で、米ニューヨークダウが3.39%であった。
これに対し日経平均は7.92%安と、フランスと肩を並べ、英独米以上の下落だ。また相変わらずの、「下げ材料が日本以外であっても、日本株が一番大きく下がる」という、海外投機筋が売り仕掛けをやりたい放題の、ダメダメ状態であった。
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