その英国が、どうして満足のいく貿易協定を結べないはずがあろうか。米国にはそれができていると私が言えば、「米国は特に大きいからだ」という答えが返ってくるかもしれない。ならばシンガポールはどうかと問えば、「特に小さいからだ」と返されるかもしれない。どうも悲観論者たちの考えでは、国たるものはとても大きいかとても小さいかのどちらかでなければならず、英国は中途半端であるようだ。「小国であるには大きすぎ、大国であるには小さすぎる」としたら、まるで童話「3びきのくま」(主人公の少女が「ちょうどよい温かさのスープ」や「ちょうどよい堅さのベッド」を見つける)の逆バージョンではないか。
これはナンセンスだ。現実の英国は依然として重要な経済国家であり、他国から見れば大きな輸出市場となっている。英国は(スイスがそうであるように)世界の多くの国々と好ましい貿易関係を結べる地位にある。
それに多くの人々は、世界的な影響力の低下は避けられないと決めてかかっているが、英国はGDPのランキングを堅持するだろうし、いくつか順位を上げる可能性もある。
人口学的な要因も大きなインパクトを与えそうだ。大規模な移民によって状況が根本的に変わらない限り、ドイツ、イタリア、スペインの人口は減少していくだろう。フランスの人口は若干増加したあとで安定に向かう。一方、英国の人口は目に見えて増えていくだろう。おそらく2050年以降に、英国の人口がドイツを上回ることになりそうだ。
かくして英国は、おそらく欧州で最大の経済規模を持つ国となる。GDPではブラジルとインドに抜かれるのは確実だが、フランスとドイツを抜くだろうから、世界ランキングは依然として第6位のままだ(これは市価のGDPを比較したもの。購買力平価では幾分違ったランキングになるだろうが、実質的な論点は揺るがない)。
英国と日本の関係は変わらない
英国に投資する日本企業には、意を強くしてもらいたい。ここで声を大にして言っておくが、たとえEUから離脱しても、英国はEUとの緊密な貿易関係を維持するだろう。それにEU離脱は、英国にとっての万能薬ではないとはいえ、一連の機会になることは間違いない。
忘れてならないのは、欧州のほとんどの国々とは違い、英国の人口統計が有望であることだ。先述したように、これから20年もすれば、英国は欧州で最大の経済規模を持つ国になっているだろう。そしてEUにとどまるにせよ離脱するにせよ、英国は間違いなく日本からの投資を歓迎し続けるし、日本の親しい友人・同盟国であり続けるだろう。
(翻訳:町田敦夫)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら