シェールガス革命で世界は激変する(上) 素材、化学など日本企業にも恩恵

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

原発稼働や着工が難しい現状にあって、火力発電こそが日本の中心的なエネルギーになるだろう。世界的に見ても火力発電こそが主力、という声が多いのだ。こうなれば、原発プラントで世界トップシェアを持つ東芝は、その持てる技術をシェールガスに転用して稼ぐだろう。また、ガスタービンでは世界ナンバーワンの折り紙つきの三菱重工業にも福音がもたらされることになる。

排水や薬液などの環境問題も難なくクリア

最近になって、国内化学メーカー第1位の三菱ケミカルホールディングスは、米化学大手のダウケミカルと提携し、シェールガスを活用した石油化学コンビナート構築を打ち出した。

シェールガスから基礎化学品のエチレンを生産すると、コストが日本の化学工場の20分の1になるという。つまりは、自動車部品や液晶パネルに使う樹脂工場をローコストで建設し、世界の競合メーカーに対して先行してブッチぎっていこうとの考えなのだ。

一方でシェールガスは大量の排水があり、多くの薬液も使われることからEU諸国の中にはこれを禁止する国も出てきた。つまりは、公害問題の発生がデメリットという向きもある。ところがどっこい、それなれば世界ナンバーワンの日本の水処理技術がすべてを解決してしまう。三機工業、栗田工業、荏原の出番が来たのだ。

2013年は米国で1万カ所のシェールガス掘り出しが始まるといわれている。三菱商事、三井物産、住友商事、双日など世界に誇る日本の総合商社は、これらの掘り出しに大量の出資をしており、かなりの権利を握っている。

それゆえに、現在の天然ガスのような高い価格で日本がシェールガスを輸入するということはない。シェールガス革命は米国におけるモノづくりを大復活させ、日本の最大の輸出先は中国から再び米国に変わるのだ。反日ではない国、米国との取引が一気に拡大することは確実であり、もしかしたらこれが最大のシェールガスメリット、と言ってもいいかもしれない。

 
泉谷 渉 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いずみや わたる / Wataru Izumiya

株式会社産業タイムズ社代表取締役社長。神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。1977年産業タイムズ社に入社、1991年に半導体産業新聞を発刊、編集長に就任。現役最古参の半導体記者としてキャリア35年を誇る。日本半導体ベンチャー協会理事としても活躍。主な著書に『これが半導体の全貌だ!』『これがディスプレイの全貌だ!』(以上、かんき出版)、『ニッポンの素材力』『ニッポンの環境エネルギー力』『1秒でわかる!半導体業界ハンドブック』『1秒でわかる!先端素材業界ハンドブック』『素材は国家なり(共著)』(以上、東洋経済新報社)、『日の丸半導体は死なず』(光文社)、『100年企業、だけど最先端、しかも世界一』(亜紀書房)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事