ガス輸入後の流通・インフラに大きな課題 米国シェール革命と日本 《4》
米国で近年急速に進んだシェールガス、シェールオイルの生産本格化による「シェール革命」。そして、日本でも秋田県で国内初のシェールオイル採取に成功したことにより、「シェール」への関心が一段と高まっている。
「米国シェール革命と日本」シリーズ第4回では、日本の企業や政府などを対象にコンサルティングをしている研究員の立場から、米国シェールガスへの投資、輸入販売に関する問題点について、三菱総合研究所の環境・エネルギー研究本部の主任研究員を務める鈴木敦士氏(工学博士)に聞いた。鈴木氏は、米国産シェールガスの確保に加えて、日本に入ってきた後の流通面、インフラ面にも課題があると指摘する。
■パイプラインやLNG輸入基地の能力を懸念する日本企業
--米国のシェールガス、シェールオイルに関して、日本企業からどのような問い合わせや相談が増えていますか。
たとえば、これまで天然ガスの分野で事業経験の少ない日本の企業が、米国のシェールガスの上流権益へ進出しようというときに、下流側の日本国内でガスの最終需要先がどこまで見込めるのか、パイプラインなどのインフラにアクセスする場合のコスト水準はどの程度なのか、日本側のLNGターミナル基地のキャパシティはどうか、そうした見通しが1つ目のポイントとしてある。
2つ目としては、天然ガスの流通に関わる機器メーカーにとってのシェールガスの影響見通しがある。シェールガス革命によってガス流通インフラの開発が進むのかどうか。日本国内よりもむしろアジアなど海外諸国への影響を見極めようとする動きだ。天然ガスの流通には、エネルギーとしての天然ガスだけでなく、石油化学原料としての流通も視野に入っている。
3つ目には、発電コストへの影響がある。たとえば「新電力」と呼ばれる新規参入発電事業者やガスを燃料とした自家用発電を導入しようとする事業者にとっての将来見通しについてだ。また、発電コストは大口の電力需要家にとっても電気料金という側面から問題意識として大きい。現在、原子力発電所が止まってガス火力発電所の稼働が増えた結果、電力料金が上昇しているが、米国のシェールガスが導入された場合に、中長期的には電力料金が下がるのかどうか、といった関心だ。米国でのガス価格は確かに日本と比べて大幅に安いが、その水準がいつまで続くのか。液化コストや運賃を含めてどの程度まで上がるのか。日本は米国外から高くガス(LNG)を買っているので、足元を見られることはないのか。そうしたことを考えて、どのくらい安く調達できるかがポイントとなる。