シェールガス革命で世界は激変する(上) 素材、化学など日本企業にも恩恵

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日本の技術が支えるシェールガス革命

しかして、わが国日本ではシェールガスはほとんど出てこない。わずかに秋田県由利本荘でシェールオイルが見つかった程度である。それならシェールガス革命は米国に最大の恩恵をもたらすが、日本にはそれほどのメリットはないのでは、と考える人たちも多い。

ところが、実はそうではないのだ。結論を先に言えば、シェールガス革命で日本の企業には莫大なメリットが生じてくる。

シェールガスを取り出すためには2000メートルも掘り下げるわけであり、この圧力に耐えられる鋼管パイプは、新日鉄住金など、日本の鉄鋼メーカー以外には作れない。シェールガスを精製して気体から液体、液体から気体へとリサイクルを行うが、このプラントは住友精密工業と神戸製鋼しか作れない。

一番難しいのはアルミの穴あけなのだ。技能オリンピックで十数年連続金メダルを取る日本の「匠」の技術の一つが、アルミの穴あけなのだ。シェールガスを収納する運搬容器には炭素繊維が使われる。この分野は東レ、帝人、三菱レイヨンの国内勢が世界シェアの約70%を握っており、ここにも強い追い風が吹くのだ。

また、シェールガスは大型タンカーで輸送することになるが、ここでモノをいうのがアルミの厚板であり、これまた古河スカイなど日本勢しか作れない。地中から引き上げてきたシェールガスの原材料に対し、大量の水を使うが、この水量全体を減らすために膨大な窒素を使用することになる。

材料ガス国内最大手の大陽日酸は、笑いが止まらないかもしれない。さらにいえば、シェールガス採掘に伴う工事は土木であり、大型ブルドーザー、各種ショベル、大型トラックが必要になる。コマツや日立建機もまた笑いが止まらないだろう。

そしてまた、これらの建機に使用する超大型タイヤは、世界でただひとつブリヂストンにしか作れないのだ。

東京都は400億円のファンドを積んで,東京湾岸に火力発電10基を作る計画を打ち出している。猪瀬直樹新知事は必ずや断行するだろう。ここにもシェールガスを中心とする天然ガスが採用される。

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