目先は連続減益でも、中期的にICT(情報化)で挽回する――。
建設機械国内最大手のコマツの定時株主総会が6月22日、東京国際展示場(東京ビッグサイト・江東区有明)で開催された。出席株主数は1544人(昨年は1610人)で、所要時間は1時間49分と例年並みだった。2015年度決算が6%減収、14%の営業減益となるなど、厳しい事業環境下での開催だったが、特に混乱もなく、剰余金処分や取締役10名の選任(会長や社長など9名が再任)、監査役1名の選任、取締役賞与支給など、5つの議案はすべて承認された。
株主からの質問は9人で、15問あった(うち1つは意見)。主な質問は2015年度まで3カ年の中期経営計画が目標未達だったことに関連したもの。大橋徹二社長は、新興国の成長鈍化や資源価格の暴落により、鉱山機械の需要が2012年度の約3割まで落ち込んだり、中国の建機市場がピークの5分の1に縮小したりするなど、市場環境が大きく変わったことが主な原因と説明した。
そのうえで、「スマートコンストラクション」に向けたICT建機の投入や固定費の計画以上の削減などの重点活動は着実に達成したことや、営業利益率などの収益性については同業他社(世界最大手の米キャタピラーや国内2位の日立建機など)と比べても高水準を維持していることなどに、理解を求めた。利益の成長率で見た場合は業界並みだったが、2016年度からの新たな中計では、「需要停滞が想定される中でも、スマートコンストラクションなどのイノベーションや既存事業の成長によって、業界水準を超える成長を実現する」と意欲を示した。
中国市場は4万~5万台まで回復
今後の需要見通しについては、戦略市場でもある新興国で調整局面が続いており、今後2~3年は足踏みが予想されるが、世界の人口増加や都市化率の上昇を背景に、長期では増加していくとの認識。中国の建機市場についても、ピークだった2010年度の14万台から現在は2万台レベルまで急減したが、中長期的には4万~5万台程度までは回復するとの見方を示した。インドやミャンマー、フィリピンなども将来の有望市場であり、コマツとしては「アジアでダントツNO1」を掲げて、今後も注力していく戦略だ。
そのスマートコンストラクションについても質問が出た。自社系列のレンタル会社を通じたICT建機の導入が中心であり、閉鎖性などの懸念が出ている点について、経営側は他のレンタル会社向けにも4月から機械を販売するなど、オープンに対応していく方針を強調した。
現地時間の6月23日に英国で実施される、EU(欧州連合)離脱を巡る国民投票の影響に関しても、質問があった。コマツは英国に油圧ショベルの工場を有する。ただ、欧州におけるほとんどの生産拠点はドイツやイタリアなど大陸側にあり、需要先も大陸側に集中している。コマツの全売上高に占める欧州の割合も10%を切っている状況で、仮に英国がEU離脱となっても影響は限定的だと経営側は説明した。
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