三菱UFJ銀行が資格を返上、国債に潜む「地雷」 マイナス金利政策でトップ銀行が異例の行動

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財務省理財局の辻貴博国債業務課長は「今も国債の応札額は発行額の2〜3倍あり、特別参加者22社を含め246社が入札に参加可能。一部で資格返上があっても直接的な影響は大きくない」と語る。

危機を覆い隠す日銀

が、金利が上昇しなかった最大の理由は、別にあるだろう。それは日銀が量的緩和で“国債の爆買い”を続けているという事実そのものだ。

仮に金利が上昇するそぶりを見せても、日銀が市場で国債を強引に買い進め、金利上昇を鎮圧するだろう──そんな漠然とした空気が市場を覆っている。

ここまで事態が進めば、最近のギリシャであったような、中央銀行が政府と一体となって国債金利を管理する国家統制体制(国債価格支持政策)にほかならないが、それを自然と受け入れるムードが広がる。

日本のトップバンクでさえ、国債の落札義務を果たせなくなっている(写真:ロイター/Kim Kyung Hoon)

折しも安倍晋三政権は、消費増税の再延期を決定。さらに国債利払い費を当初予算からゼロ金利前提とし、その分歳出を拡大したり、日銀が保有する国債の利払いや償還を不要にしたりする議論が、永田町界隈(かいわい)で進んでいる。

「金利が上がらないから安心」なのでなく、その下で政治家の財政規律が決定的に弛緩し、危機のマグマを大膨張させる時期が迫っている。

「今のような異常な金利低下が何年も固定化されるとはにわかに信じがたい。円安やインフレなど望まざる形で短期間に金利が上昇するリスクはある」とSMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは警鐘を鳴らす。

三菱UFJ銀という日本のトップバンクでさえ、国債の落札義務を果たせなくなっている。今の日本経済は巨大な地雷の上にあるようだ。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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