債券市場にも、不安が走りやすい素地があった。足元の国債利回りは超長期の下落が激しい。2015年末対比の利回り低下幅は、10年物の0.46%ポイントに対し、20年物が0.85%ポイントで、30年物は1.1%ポイント。償還年限が長いほど下落が大きくなっている。
2003年VaRショックの再来か?
このことから「超長期金利が急激に低下した後に急騰した、2003年のVaRショックの再来が想起された」と言うのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストだ。
VaRショックは2003年6月、国債入札結果が市場予想よりやや悪かったことがきっかけ。売りが売りを呼ぶ展開となり、わずか2カ月で10年物利回りが約1%上昇した。リーマン危機後の米国や、ECB(欧州中央銀行)による量的緩和決定後の欧州でも、一時的に超長期金利が異常に低下し、その後金利が急騰する局面があった。
金利が上昇すると、債券価格は下落する。金融機関は多額の債券を保有しており、金利急騰は金融機関の資産を急悪化させる。さらに日本の財政は先進国で最悪の状況だ。金利が上昇すれば、国債利払い費が膨らみ、国家財政が行き詰まりかねない。
それだけに、三菱UFJ銀が特別参加者資格を返上するとの報道に、債券市場関係者の多くがヒヤリとした。
しかし、債券取引の結果を見ると、ひとまずは事なきを得たようだ。6月8日朝方、先物に若干の売りが出たが、その後の金利上昇はわずか。9日からは下落が続き、10年物国債利回りは、連日のように過去最低を更新している。
みずほ銀行や三井住友銀行が「当行は検討していない」との声明を発表し、資格返上の動きは一部にとどまった。
「売買業務を行う証券部門では引き続き特別参加者資格を維持し、グループ全体での国債市場への貢献は何ら変わらない」(三菱UFJFG関係者)との言葉どおり、翌6月9日の国債入札では三菱UFJモルガン・スタンレー証券が落札額でトップに躍り出た。
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