政府・日銀は長期金利の数字を無意味にした 金利ストラテジストの森田長太郎氏に聞く
――三菱東京UFJ銀行(BTMU)が国債のプライマリーディーラー(PD)の資格を返上するとの報道があった。
個別の経営判断として検討したのだろう。みずほ銀行や三井住友銀行が追随する話かというと、その後の報道を見る限り必ずしもそうではない。PDにはメリットもデメリットもある。それを一部メディアが日本銀行のマイナス金利批判に絞って書いてしまった。やや恣意的との印象がある。普段は債券市場を見ていない方々には、あの記事を見て何か大変なことが起きているのではないかと受け取る人が多い。だが、あくまでも個別企業の判断だ。
日銀が買ってしまっているので銀行は買えない
――6月8日の報道後、マーケットに影響はあったのか。
一部メディアは「応札義務は発行額の4%以上」などといった大きな数字を強調していたが、落札義務自体は1%。普通に考えると、それで市場全体が影響を受けるという話ではない。
そもそもBTMUがPDから抜ける、抜けないに関わらず、日銀が国債を買っている結果として、銀行の国債保有額は減り続けている。銀行が国債市場から抜けたいと思っているのではなく、日銀が買ってしまっているので銀行が買えないだけ。金利が低すぎることが問題ではあるが、日銀がそうしようとしているのであって、金融機関側に主体的な意図はない。将来、金利が適正水準まで上がれば、銀行は市場に戻ってくる。今回の報道について、債券市場は冷静に見ている。ただ、株式市場や為替市場などの関係者から質問が多かったのも事実。端から見ると「これは何だ」という程度のインパクトはあった。
――BTMUのPD返上によって、今後の日銀の行動に変化が起きるか。
日銀がマイナス金利を導入した目的は、イールドカーブ(利回り曲線)の起点を下げることにある。そこについては、日銀が考えを変えるとは思わない。ただ一方で、長期金利が下がって、イールドカーブが極端にフラット化(短期金利と長期金利の差が小さくなること)してしまった。これを受けて、長期金利がマクロの経済状況を反映する機能が失われてしまったのではないかという問題意識も日銀内に出てきているようだ。
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