政府・日銀は長期金利の数字を無意味にした 金利ストラテジストの森田長太郎氏に聞く

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森田長太郎(もりた ちょうたろう)/SMBC日興証券 チーフ金利ストラテジスト。慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券を経て2013年8月から現職。日本の国債市場での経験は通算で20年超に及ぶ。グローバルな経済、財政政策の分析などマクロ的アプローチに特色。機関投資家からの人気が高い。著書に『日本のソブリンリスク』(小社刊・共著)、『国債リスク 金利が急騰するとき』(小社刊)

――6月15~16日の日本銀行の政策決定会合で具体的なアクションはない?

日銀も「マイナス金利の効果がまったくなかった」とは言えない。ただ、足元の物価状況は鈍っている。「マイナス金利の効果も少しはあるが、足りない」という説明をせざるをえない。おそらく、逐次投入型の政策になるのではないか。

ただ、日銀内で問題意識も出てきているように思える。緩和がまだ必要だという意見と、やり過ぎに対する調整が必要という意見が混在している。

どんな批判を浴びても金融緩和を進めていくという方針が徹底していればマーケットは動じないが、「長期金利が下がりすぎたし、マイナス金利も批判を浴びているので、少しは長期金利が上がってもいい」という政策とのミックスになると、金利がハネ上がってしまうリスクがある。そこを注視している。

長期金利の数字がマクロ経済の実態から乖離

――価格形成機能に不安があるということか。

すでにまともな価格形成はされていない。フォワード・レート(現在予測される将来時点の金利)は通常、潜在成長率や均衡インフレ率を反映して動くものだが、去年の終わり頃からマクロのファンダメンタルズと乖離してきた。マイナス金利の導入がその傾向を加速させた。

過去の事例をひもとくと、米国ではリーマンショックの直後に、欧州でも昨夏にフォワード・レートの異常な低下が起こり、いずれも短期間で反転した。ただし、日銀は量的緩和から入って、マイナス金利を導入した。欧州は順序が逆で、中央銀行による買い入れがイールドカーブを抑える圧力は日本ほどではなかった。だから日本でも短期間で戻るかは不透明だ。かといって、ファンダメンタルズとの乖離が2年も3年も続くのかと言われると、何らかの調整が起きても不思議ではない。

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