市場が織り込んでいない「3つのリスク」 株価暴落や急激な円高が進む恐れがある
FRBは市場の「晴れ間」を見て動かざるをえない
6月3日に発表された5月米雇用統計(非農業部門の雇用者数は前月比わずか3.8万人の増加)は、誰もが驚くほど悪い数字となった。もちろん過去にも、ひと月だけ悪い数字が出て、その後また順調に雇用を回復していったケースはある。ただ、その場合だったとしても、次の雇用統計(7月8日)まで待たなければならない。5月27日のFRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長講演で、議長自ら「数カ月以内に」と述べた米利上げだが、その実現可能性に黄色信号が灯っている。
そもそも、なぜFRBは利上げを急ぐのか。それは昨年の「チャイナショック」で明らかになったように、自国のことだけを考えて利上げできる時代は終わってしまったからだ。
FOMC声明文で”international developments”という言葉が用いられたが、米利上げが中国及び新興国市場を揺らし、それが世界の金融市場全体を揺るがすため、結局、利上げしたくてもFRBが利上げできないという状況が続いている。市場の「晴れ間」を見て動かざるをえないのだ。
これまでの流れを見てみると、昨年のチャイナショックで9月利上げが流れた。その後FRBは自重、そしてついに同12月に利上げに踏み切った。しかし、その利上げの影響もあり、今年1月、中国が人民元切り下げに動き、グローバル市場は動揺した。その動揺を収束したのが、2月26,27日に行われた上海G20であり、「暗黙のドル安合意」「米利上げ先送り」「中国財政出動」が決まったと言われており、市場は安定化した。
こうしてみてみると、米利上げの意向表明(米利上げ)⇒市場不安定化⇒利上げ断念⇒市場安定、という一連のサイクルが見て取れる。実質的にFRBが「世界の中央銀行」としての役割を果たしているということなのだろうが、FRBはこのサイクルの間隙を突いて利上げに動かざるをえない。いったんチャンスを逃すと、次はなかなか来ないのだ。