あれこれ考えているうちに、日銀の金融政策決定会合の結果が発表された。NHKニュースの開口一番は「大規模な金融緩和を維持する」といった原稿だったのだが、端的に言って「ゼロ回答」だ。
市場では、多数とは言えないまでも「何らかの追加緩和があるのではないか」との観測を持つ向きが存在したので(筆者もその一人だ)、これは円高・株安に作用するはずだと思い、為替レートと株価を眺めていたら、為替レートは105円を割り込む円高に、株価に至っては日経平均で前日を485円(3%強)下回る15,434円(16日終値)という惨憺たる状況になってしまった。
日銀は「追加緩和+メッセージ」で対処すべきだった
政策の「小出しを嫌い、サプライズを好む」黒田総裁体制の日銀の特徴が、今回は悪い方に出た。予想されているときに緩和してもつまらないと思ったのかもしれないし、来週に英国のEU離脱を巡る国民投票(結果は日本時間の24日)を控えて、円高の場合に対処できるカードを残したのかもしれない。
しかし、今回も小幅の緩和を打ち出して「1ドル105円近辺は、やや円高に過ぎる」という判断を滲ませておいた上で、「必要があると判断すれば、追加の緩和措置を躊躇無く実行する」というメッセージを付け加えておくのが良かったのではないだろうか。
このままでは、来週「ブレグジット」(英国のEU離脱)が可決された場合、1ドル100円を超える円高が示現する可能性が十分あるだろうし、そこまで行ってしまうと、並みの追加緩和(例:小幅なマイナス金利拡大)では、円高を止められなくなる可能性がある。消費税利率引き上げの延期発表が遅くなりすぎ、さらに追加緩和のタイミングも遅れて、アベノミクスの打つ手が後手後手に回りつつある点が少々気がかりだ。
なお、ブレグジットは、英国経済界にとっては、EUとの取引に関税が掛かり、移民の労働力を使いにくくなるデメリットがある。他方で、英国庶民(労働者階級)にとっては、テロからより安全(なイメージ)になり、流入する移民との労働市場での競合が緩和されるメリットが感じられよう。
「経済(全体のパイ)にマイナスだ」という説得だけで離脱賛成派を説得できないとすると、経済界及びエスタブリッシュメントの側には、日頃の労働者への富の分配が不十分である点について油断があったといえるかもしれない。
なにせ、株主総会と違って、選挙や国民投票は(成人)一人一票なのだ。トランプ&サンダースにかき回された米国も、ブレグジットへの動きに慌てる英国も、お金持ち階級は、再分配のコストをセーブしすぎたのかもしれない(注:別に資本主義が悪いのではない。資本家が間抜けだっただけだ)。
もしブレグジットが成立してしまった場合にどうするかは、筆者の次の次(7月1日配信予定)ご担当のぐっちーさん(投資銀行家)が教えて下さるかもしれないが、筆者が個人投資家なら、新興国株式の底値買いを(金額は少々だけど)狙ってみたい。
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