ベビーパウダーに「発がん性物質」は本当か 原料タルクと卵巣ガンの関連性は?

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1990年代にタルクとがんの関係を示す研究が報告され始めてからも、米政府はタルカムパウダーの排除や警告表示の義務付けなどに動いていない。非営利団体のがん予防連合は1994年と2008年に、食品医薬品局(FDA)に対してタルクの警告表示義務を求めた。FDAは2014年、因果関係を示す「決定的な証拠」は見つからないと却下したが、タルクは「異物型反応と、一部の女性に対して上皮がんに進行する懸念のある炎症反応を起こす可能性がある」とした。

それにもかかわらず、J&Jはアフリカ系アメリカ人とヒスパニック系の消費者をターゲットに「フランチャイズを拡大する」計画をしていたことが、原告の弁護士アレン・スミスが得た同社の資料で明らかになっている。

小児科医は乳児への利用を推奨していない

訴訟資料によると、J&Jのタルクのサプライヤーは2006年から警告を表示しているが、同社は自社製品にそうした警告を表示していない。ベビーパウダーには、子供の手の届かないところに保管するよう表記されており、小児科医も乳児が吸い込むと病気になったり命に関わる危険性があるとして使用を推奨していない。国家毒性プログラムによれば、雌のラットを使った吸入実験で発がん性が証明された。コーンドームや手術用手袋のメーカーは、製品へのタルクの使用を控えるようになっている。

「タルカムパウダーが興味深いのは、それが必要不可欠なものではないからだ」と、シアトルのフレッド・ハッチンソン・がん研究センターの疫学者アン・マクティアナンは言う。「何かしら疑いがあるのなら、なぜ人々は使うのか」

進行性卵巣がんを患うバーグは、J&Jを相手取った訴訟に勝利したが、損害賠償の支払いは認められなかった。タルクをめぐる他の訴訟が社会の関心を高めることを彼女は願っている。

「以前は何も知らなかった」と、バーグは言う。「ベビーパウダーは赤ちゃんのためのものだから、絶対に安全だと思っていた」

(執筆:Roni Caryn Rabin記者、翻訳:前田雅子)
 

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