ベビーパウダーに「発がん性物質」は本当か 原料タルクと卵巣ガンの関連性は?
J&Jはタルクに関する研究は不完全だと主張し、タルクの発がんリスクを否定する研究を根拠に挙げている。
「私たちにも子供がいる」と同社のベビー用品の海外フランチャイズに向けた研究開発を率いるタラ・グラスゴーは言う。「自分たちが安全だと確信していない製品は決して販売しない」
では、裁判にあたった陪審員は正しかったのか、それとも間違ったのか? 爽やかな香りでフワフワしていて、どの家庭にもあり、乳白色の容器に入った赤ちゃんのお尻にもやさしいと言われているJ&Jのベビーパウダーが、がんを引き起こすのだろうか?
タルクはさまざまな製品に使われている
この答えを出すのは難しい。
「あるものにさらされることと疾患との絶対的な因果関係が明確になることはない」と、ハーバード大学付属ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の医学・疫学准教授のシェリー・トウォロガーは言う。99%確信できるケースもあるかもしれないが、「一般的に、目に見えるものが真実だと保証する術はないのだから」と彼女は言う。
がんの研究が困難なのは、長い期間を経て発生し、遺伝子や行動、環境などさまざまな要因の影響を受けるためだ。私たちができる最善のことは、「証拠の優越性に着目することだ」と、トウォロガーは言う。
タルクは天然の粘土鉱物で、ケイ酸マグネシウムから成る。やわらかいのが特徴で、水分を吸収し、固まるのを防ぐため、頬紅などの化粧品に使用されている。タブレットやチューインガム、米などの添加材としても使われる。発がん物質として知られるアスベストの近くで採掘されるため、メーカーはアスベストが混入しないように対策を講じる必要がある。