ベビーパウダーに「発がん性物質」は本当か 原料タルクと卵巣ガンの関連性は?

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多くの女性は股ずれを防止するためにパウダーを内股に使うが、性器やサニタリーパッド、下着などに塗布して、清潔でさらさらとした状態を保つという女性もいる。ベビーパウダーの人気復活を狙った1980年代の広告には、こんな宣伝文句があった。「毎日ひと振りすれば臭いとサヨナラ」

女性たちを意図的にタルカムパウダーにさらして調査することは現実的にも倫理的にも不可能なため、科学者たちはパウダーとがんとの関連性を示す観察研究に頼っているが、因果関係を断定することはできない。

日常的な使用で罹患リスクが3倍に

1982年にハーバード大学教授のダニエル・クラマーらは、卵巣がん患者の女性と健康な女性それぞれ215人を比較調査した。すると、タルカムパウダーを使用していた女性は使用していない女性に比べて卵巣がんの罹患リスクが約2倍で、日常的に性器やサニタリーパッドにパウダーを使っている女性は、そのリスクが3倍にものぼった。

その後に行われた少なくとも10の研究で、数値は異なるものの同じ傾向が示された。一方、タルカムパウダーの使用者が高いリスクを示さなかった研究はごくわずかだ。

研究者たちが合計約2万人の女性が対象となった研究結果を集めたところ、タルカムパウダーを使用すると卵巣がんのリスクが24%増加したことがわかった。卵巣がんは珍しい病気だが、死に至るケースも少なくない。この結果が事実ならば、卵巣がんを発症したタルカムパウダー使用者の5~6人に1人は、がんの原因がパウダーであることを意味すると、トロントのがん遺伝学の専門家スティーブン・ナロドは指摘する。

なぜタルクががんの原因となり得るのかは明らかになっていない。タルクの結晶が尿生殖器から卵巣のある腹腔に達することを明らかにした研究もある。実際、バーグスの腫瘍の病理検査では、タルクの粒子が組織に入り込んでいた。

トウォロガーによれば、タルクの粒子が炎症を引き起こすこともあり、炎症は卵巣がん発生に大きく関与していると考えられている。

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