「抗がん剤の是非」を巡る論争は、不毛である

がん患者にとって一番大事なものは何か

がん治療の是非を判断する上で一番大事なことは? (写真:hide / PIXTA)

がんが日本人の死因の第1位となって久しい。家族ぐるみで考えれば、この病気と無縁なままで済む人はまず、いないだろう。だが、その割には、うまく付き合えている人は少ないのではなかろうか。そこで、腫瘍内科の第一人者として、数多くのがん患者に接してきた、虎の門病院臨床腫瘍科の高野利実部長に、3回にわたって問題の本質を語ってもらう。
今回はその第一弾。抗がん剤治療がテーマだ。抗がん剤に対する患者側の対応は、すがりつくか全否定するかの二極に分化しているのが実情だが、こうした極端な風潮の裏には何があるのだろうか。そして、流されないための心構えとは。

 

もし、あなたや、あなたの大事な人が、抗がん剤治療を勧められたら、どう思うだろうか。

抗がん剤というと、髪の毛が抜けてしまう、ゲーゲー吐いてしまうなどのきつい副作用のイメージが強い。最近は、副作用を軽減する治療が発達したとはいえ、つらい治療であるのは間違いない。

医師は悪魔ではない

つらいだけであれば、それは「悪魔の薬」であり、患者さんを苦しめるためにそんな薬を使う医師がいたら、それは悪魔だ。だが、多くの医師は、悪魔なんかではない。患者さんにプラスになると考える場合に限って、抗がん剤を使っている。

抗がん剤をうまく使うことができれば、使えば使うほど、がんの症状がやわらぎ、患者さんは元気になる。もし、使えば使うほどつらくなり、何もいいことがないという場合には、その治療をやめた方がよいだろう。

抗がん剤に限らず、すべての医療行為には、利益(ベネフィット)と不利益(リスク)があり、リスクがあっても、それを上まわるベネフィットがあれば、その治療を行う意義がある。

重要なのは、リスクとベネフィットのバランスであって、どちらかだけを強調するのは適切ではないが、抗がん剤は、その激烈なイメージゆえに、両極端なとらえ方をされることが多いようだ。

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