「抗がん剤の是非」を巡る論争は、不毛である がん患者にとって一番大事なものは何か

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まず考えるべきは「これからの人生をどう生きていくか」ということだ。その目標にプラスになるなら抗がん剤を使えばいいし、マイナスになるなら使わなければいい。プラスかマイナスかは状況次第で違う。「どんな場面でも絶対にプラス」とか「どんな場面でも絶対にマイナス」というように、一般論として白黒つけることに意味はない。

いいと決めつけてすがりついてしまったり、悪いと決めつけて全否定してしまったりして、思考を停止させてしまうのではなく、いい面と悪い面を知り、そのバランスを考えることこそが重要なのだ。

頼りすぎず、怖がりすぎず

抗がん剤は、「希望のすべて」でも「悪魔の毒薬」でもなく、使い方次第でプラスにもマイナスにもなる道具だ。頼りすぎず、怖がりすぎずに、活用すべきときに活用すればよい。

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抗がん剤に対して、いいイメージを持っていても悪いイメージを持っていても、また、医療に対して肯定的でも否定的でもよいが、そういったイメージや善悪二元論のために、バランスのとれた思考ができなくなっているとしたら、それは考え直した方がよいだろう。

不毛な抗がん剤論争は、もう終わりにすべきなのだ。

それよりも、「幸せ」「希望」「安心」を感じられるような医療のあり方、自分らしく生きるための、がんとの向き合い方について、一人ひとりがきちんと考えていくことの方が、よほど重要だ。

そんな想いでこのほど、拙著「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」を上梓した。これまで出会った患者さんたちの生きざまやエピソードを紹介しながら、腫瘍内科医として考えてきたことなどを綴った。この本が、抗がん剤をめぐる不毛な論争に戸惑ってしまっている患者さんやご家族の支えとなることを願っている。これからがんと関わるかもしれない、すべての人に読んでいただければと思う。

高野 利実 虎の門病院臨床腫瘍科部長

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たかの としみ / Toshimi Takano

1972年東京都生まれ。1998年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院内科および放射線科で研修。2000年より東京共済病院呼吸器科、2002年より国立がんセンター中央病院内科レジデント。2005年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。2008年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。2010年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、3カ所目の「腫瘍内科」を立ち上げた。

「日本一の腫瘍内科をつくる」ことを目標に、乳癌・消化器癌・泌尿器癌・肺癌など悪性腫瘍一般の薬物療法と緩和ケアに取り組んでいる。また、日本臨床腫瘍学会(JSMO)がん薬物療法専門医部会長として、日本における腫瘍内科の普及と発展を目指しているほか、西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員会委員長として、乳癌に関する全国規模の臨床試験に取り組んでいる。著書に「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある

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