JTBが花火大会でパイプ椅子席を売るワケ ある営業所長が気づいた「提供価値の大転換」

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永井:地域の人たちとコミュニケーションが取れて、なおかつ、地域の商品開発もできることが必要ということですね。

武田:たとえば当社の教育関係向けの営業担当だと、修学旅行のために毎日のように学校に行っているわけです。先生が何を求めて、生徒が何に喜んでいるか、ものすごく情報が蓄積されているわけです。そうした視点を生かせば、地域に子供たちが来たらどうすると喜んでもらえるか、教育の視点でどうすれば地域の強みを生かせるか、といった提案ができる。実はすごく役立つ能力なんですよね。

「ウチはいいところです」だけでは製品にならない

永井:私は日頃講演などで、「お客様が買う理由を作りましょう。それには、最初に自分たちの強みを考え、その強みを必要とするターゲットのお客様とその課題を徹底的に考えて、そのうえで解決策を作りましょう」と提唱しています。JTBさんご自身も「JTBの強みは何か?」を考えた末に、全社で交流文化事業へ取り組まれているということですね。

一方で、旅行会社など第三者のお客様目線が入らず、地域が単独で観光誘客や旅行商品づくりに取り組むケースもありますよね。その場合、地域が考えていることと、観光客が望んでいることのギャップは、どうなんでしょう?

武田:残念ながら、ギャップがあることが多いですね。たとえば都会で流行っているものをそのまま取り入れたり、「温泉や自然がある」ことだけを売り物に観光誘客をしていたりしますが、別にその地域でなくてもほかでも楽しめますよね。

永井:うーん。それだけでは弱いですね。

 

武田:あと、「ウチはいいところです」と売り込む地域もよくあります。でもどの地域もみな「ウチはいいところ」って言っています。ただ「いいところ」では具体的じゃないんですね。マーケティングの4つの基本要素で、「製品」「価格」「流通」「プロモーション」がありますが、この最初の「製品」がないんですよ。

永井:確かに「いいところ」だけでは製品にはなりませんね(笑)。

武田:そこで数年前から「着地型旅行」という考えが言われ始め「地域で旅行商品を作ろう」という動きが出てきました。しかし旅行商品を作ること自体が目的になっていて、観光客から見ると面白くないことも多かったんです。たとえば「3つの自治体がおカネを出し合って作ったから、3つの街をまわる必要があるコース」とか。お客様にとってはまったく関係ないですよね。

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