JTBが花火大会でパイプ椅子席を売るワケ ある営業所長が気づいた「提供価値の大転換」
武田:実は旅行会社というのは、お客様のご要望を聞いて、その期待を超えるプランを作り、添乗員として一緒に旅先へ行って、お客様が何で喜んでいるかを隣で見ているんですね。それも国内外で。これはWeb系の旅行会社にはないところです。社員は気づいていなかったりするのですが、これがすごい強みで、そのノウハウが社内には分厚く蓄積されているんですよね。
永井:武田さんがそれを意識し始めたのはいつ頃でしょうか?
武田:7~8年ほど前、長野県諏訪市で営業所長をしていた頃ですね。かつて諏訪には精密機械を中心に工場がたくさんあったので、団体旅行や学校の修学旅行のニーズが大きかったんですよね。しかし、グローバル化が進んで生産は海外にシフトしているので、会社の大きな看板はあっても働いている人が減っていて、団体旅行や修学旅行の市場もピーク時と比べてかなり減っていました。そんな商圏に旅行会社がたくさんあるので、案件の取り合いになりますよね。企画の内容よりも、一番安い価格を提示した旅行会社に決まることも多い状況でした。
永井:価格勝負はつらいですね。
700万人のお客様からビジネスを起こす
武田:自分なりに企画力や提案力に自信があっても、それを生かせない。そこで考えを変えてみました。諏訪は近隣市町村全体で約20万人の商圏です。一方で諏訪市だけでも年間700万人近くのお客様が来る。それならば、この700万人のお客様からビジネスを起こした方がいいんじゃないかって。
永井:なるほど。今でこそ、旅行業界では出発地で集客して観光地に送客する「発地型」ビジネスから、着地点である地域の魅力を高める「着地型」ビジネスへの変革が言われていますが、すでにその頃から取り組まれていたんですね。当時、まだ誰もやっていなかったと思いますが、どのように進めたのですか?
武田:手探りでしたね。ただ「これはJTBだけではできない」とわかっていました。地域の方々と一緒にやることが必要です。そこで商工会議所とか、ロータリークラブとか、行政関係といった、地域のいろいろな団体の中に入ってまずはビジネス抜きで何かやっていくところから始めましたね。
永井:本当にイチから始めたという感じですね。
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