JTBが花火大会でパイプ椅子席を売るワケ

ある営業所長が気づいた「提供価値の大転換」

武田:花火を見るためには最高の場所なんですよ。それまでは一般エリアに入るために徹夜で並んで、ブルーシートで場所取る人も多かったんですが、パイプ椅子で整理されていればお客様は安心して見られるし、お年寄りにとっても楽だし、喜んでいただきました。「付加価値」というと難しく思われがちですが、実はパイプ椅子を並べただけ。そこに大きな価値を感じてもらえる人がいるということですね。

永井:蓄積されたノウハウを次々に生かしているわけですね。

ライバルの旅行会社は、一緒に協業すべきパートナーだ

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武田:御柱祭の時には、地域の関係者と誘客促進協議会を立ち上げました。私たちが裏方になり、協議会を通じて地域の方々と一緒に進めるノウハウが蓄積されましたね。このノウハウは、阿智村で「スタービレッジ阿智誘客促進協議会」を作る際にも生きました。さらに、ほかの旅行会社にも御柱祭の背景を細かく説明して、「旅行商品を作ってください」とお願いしました。ただ当時は、せっかく苦労して開発した商品をライバル会社で売ることに対し、社内ではなかなか理解されませんでしたね。

永井:ライバルの旅行会社に塩を送っているようにも思えますよね。どういう意図だったんですか?

武田:御柱祭の魅力を世の中に広げる、市場を立ち上げて拡大する段階で、「自社だけで囲う」という考えだと市場は育ちません。ほかの旅行会社はライバルではなく、一緒に協業すべきパートナーです。だから商品化をお願いしたんです。

永井:さっきと同じ発想ですね。ほかの旅行会社は、「発型」発想だとライバルになるけど、「着型」発想だとお客様にたくさん来ていただくために、集客してくれる人はみな仲間ですよね。

武田:お互いに切磋琢磨して戦うのは、市場が立ち上がった後ですね。

永井:武田さんの諏訪での取り組みは、諏訪湖一周地図を作ったり、街歩き地図をカードにしたり、御柱祭や花火大会でパイプ椅子を並べたりと、一つひとつの行動は小さく見えるけど、その積み重ねでいつの間にか大きくなって、魅力ある観光地域づくりに繋がっていることがよくわかりますね。

(後編に続く)

(撮影:梅谷秀司)

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