JTBが花火大会でパイプ椅子席を売るワケ

ある営業所長が気づいた「提供価値の大転換」

武田:営業所長になると事業計画を作って本社に提出するのですが、ほかのマネジャーが「営業力強化・業務効率化」と言っている中、私だけは「地域とともに、地域を発展させながら事業を生み出していく」と書きました。今はJTB全社でそのような取組みをしていますが、当時は理解できない人も多かったと思います(笑)。

自ら諏訪湖を何周も周って地図を作った

永井:実際にやってみて、いかがでしたか?

武田:たとえば当時、地域で「観光客の滞在時間を増やすために、電動アシスト自転車を導入しよう」という話が出たんです。でも電動アシスト自転車は何も珍しくないし、導入しただけでは、乗っていただけませんよね。そこで自転車に乗って諏訪湖の周りを回っていただくために、私が諏訪湖を何周も周って、地図を作りました。

永井:営業所長自ら? 自転車で?

マーケティング戦略アドバイザーの永井孝尚氏

武田:そうですね(笑)。宝の地図を作ったんです。諏訪湖は一周16キロなので、1キロごとにインターネットでは検索できない質問を作って、楽しみながら諏訪湖を周辺を巡っていただき、最終的にクイズに応募いただくとプレゼントが当たるようにしました。

永井:実際に自ら動いて作ってしまう行動力、すごいですね。それにインターネット検索できない、っていうのがミソですね。

武田:そこにはこだわりましたね。ほかにも「上諏訪温泉周辺の街歩き地図を作ろう」という話が出ました。でも今は地図を作っている間に店がなくなったり増えたりして情報は古くなるし、配布も大変です。「ちょっと方向性を変えてみましょう」と提案して、1軒ごとの飲食店や観光情報を名刺サイズのカードにして、各旅館にラックを設置していただき、飲食店の人がラックにカードを補充するようにしました。これだと情報の入れ替えも容易ですし、デザインが整っているから観光客も見やすいし、旅館や飲食店の方も喜びます。さらに、旅館と飲食店の繋がりもできるので、観光地全体の活性化になりますよね。

永井:こうなると、旅行というよりも地域活性に近い感じですね(笑)。

武田:あの、なんとなく旅行の仕事をやっていない人のように見えるかもしれませんが、自分で言うのもなんですけど、私は旅行の営業もそれなりにできるんですよ(笑)。営業でお付き合いがあったお客様で、10年来のお付き合いをしている方もたくさんいます。お客様とキチンと関係づくりができる営業こそ、観光地域づくりに関わると、もっと強みを生かせると思うんですよね。

旅行の営業がキチンとできて、お客様のために考え抜いて提案できる人材でも、市場の競合が激しい中では力を発揮しにくい場面も多いんです。でもその力は、お客様が地域に来ていただくようにしたり、地域マーケティングの場面で生かせるはずですし、地域もそれを期待しています。私は社内では、「旅行の営業ができない人は、観光地域づくりの仕事は無理ですよ」と言っています。

次ページ「地域」と「観光客」が望んでいることのギャップ
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