サプライズを利用して強い印象を与える
長友佑都(現インテル)は明治大学に籍を置いたままFC東京に入団したとき、城福浩監督(現ヴァンフォーレ甲府監督)との初面談でいきなり強い印象を与える。城福監督が6つの項目で1〜10点の自己評価を求めたところ、長友は3つの項目(スピード、運動量、メンタル)で10点をつけたのだ。
城福監督は、こう振り返る。
「自主トレに入る前に、一人ずつ約30分の個人面談を行ったんですよ。そのときに各自の性格をつかむために、自己評価のシートに記入させた。標準的な選手は、自分の長所だと思っている部分は7、8点くらいをつけていた。でも、長友はまだJリーグで1試合も出てなかったというのに(明治大学3年時にナビスコカップに1試合出場したのみ)、満点の10点をつけてきた。このとき満点をつけたのは長友だけ。正直驚きました」
だが、合宿がスタートすると、城福監督は長友の自己評価が嘘ではないことをすぐに理解する。技術や戦術理解度はまだまだ大学レベルだったが、スタミナはすでにチーム一だったのだ。
もし自己評価で満点をつけなくても、城福監督ならば、すぐに長友の長所を見抜いただろう。だが、もし他の監督だったら、「ポジショニングが悪い」といったネガティブな理由で試合に使わなかったかもしれない。どのチームにいても、あらゆる機会を利用して、サプライズ的に強い印象を与えることは間違いなくプラスになる。
人の印象というのは、長所と短所のどちらにクローズアップするかでまったく別のものになってしまう。長所に関して、強い印象を与えておくにこしたことはない。
わかりやすい基準を満たす
一方、乾貴士(現フランクフルト)は、短所が改善されていることをわかりやすく伝えて、監督からの信頼を深めた選手だ。
乾は2012年夏、ドイツ2部のボーフムから1部のフランクフルトに移籍した。高い技術と天性の攻撃センスで開幕から先発に定着し、第3節から3試合連続でゴールを決めた。だがプロの世界では、活躍すればするほど、周囲の期待は膨らむもの。
第10節後、フェー監督は乾を呼び出し、こう訴えた。
「スプリント数が少ない。もっと攻守にダッシュする回数を増やしてくれ」
サッカーは自由度が高いスポーツで、数値やデータで簡単に測れるものではない。闇雲に走れば、より混乱する可能性もある。
だが、フェー監督はスプリント数を増やすことを求めていた。乾は割り切ってその意見を受け入れ、これまで以上に走ることを意識した。その結果、前期が終わった時点で、乾はドイツリーグの中で2番目にスプリント数が多い選手になった。ゴールやアシストという結果が出なかったときもずっと先発で起用され続けたのは、誰の目にも明らかな、わかりやすい基準を満たしたからに違いない。
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